雨のあとに虹 その83
「経営は良くないままなの?」
寿子が言うと
「努力はしているけど悪いね。」
純一は言った。
「俊之さんをうまく利用できないの?」
寿子が言うと
「こちらから縁を切っておいてそれは難しいよ。」
純一は言って珈琲を飲んだ。
「こうして喫茶店で珈琲を飲む余裕はあるからまだ良いわよ。」
寿子は言った。石井園からそれほど離れていたい小さな喫茶店である。
「金づるからお金を貰えるから成立っているけどね。」
純一は言った。
「これからも会いに来ていいよね?」
千晴が言うと
「僕は構わないよ。」
俊之は言った。
「また会いに来るよ。」
千晴は言った。
「時間があったらいつでも会いにおいでよ。」
俊之が言った。
「それじゃ!」
千晴が言った。
「いつでも気軽に連絡をしなさい。」
俊之が言った。
「携帯に電話するよ。」
千晴は言った。
「具体的にはすれば良いのですか?」
久美子は翔太の提案を聞いて言った。
「そこが難しくてまだ考えがまとまっていない状態です。」
翔太は言った。
「そこが肝心ですよ。」
久美子は言った。
「急ぐ必要もないので年明けくらいには決めますよ。」
翔太は言った。
「翔太さんも俊さんと同じで女心が解からないみたいですね。」
久美子が言うと
「言われてしまった。」
少し大げさに翔太が言うと
「女ってその気がないと男の人には優しくしないものですよ。」
といたずらっぽく久美子が言った。
喫茶店を出た俊之は早めに帰宅をする事にした。手塚たちと町内の見回りをするのである。町内会長の手塚や隣に住む絹枝など8人程度のメンバーで町内を巡回するのだ。下着泥棒や小学生に暴行を加える事件などが年末は特に危険が多くなっている。町内の見回りは少しでも事件の抑止力になるようにと俊之が手塚に提案したのだった。俊之はここ数年不幸が続いたが年が明ければ心機一転で良い事もあるだろうと考えていた。これからは数年ぶりにやっと運気を上げられるような気配を感じていた俊之だった。千晴があんなに大人の考えを持つようになったとは俊之は驚いていた。それは嬉しくもあったのである。決して静江や純一を嫌いでなわけではないが価値観が違う人間と付合うのは大変な事である。静江や純一たち夫婦とは縁が切れたのにその子供である千晴は平気で自分に会いに来てくれている。人の縁とは不思議なものだった。
「この夕日を見るのもあとわずかで終わるのね。」
春香はロンドンの町並みを見て言った。
「もうすぐ日本に帰れるよ。」
夫の白仁大介が春香の横で言った。時計台の見上げた春香はそっと目をつむってみた。すると過去の様々な出来事が春香の脳裏を走るのだった。
「高村さんにいよいよ会えるわ。」
春香は言った。
「高村さんは春香がお世話になった人だね。」
大介は言った。
「お世話なんてものではないわ。」
春香はそっと呟いた。その言葉に俊之との歳月の長さをうかがわせた。
「3年ぶりの日本だね。」
大介は言った。
「早く帰りたいわね。」
春香は時計台を見上げた。