雨のあとに虹 その42
俊之が目を覚ましたのもいつもの時間より早かった。起き上がり周囲をゆっくりと見るとキッチンで久美子が何かをしていた。朝食を作っているのであろう?俊之には昨夜の余韻が全身に残っていた。久美子にも余韻が残っているだろうかと思いながら俊之は久美子の方を見た。
「おはよう。」
俊之は言った。
「おはようございます。」
久美子は言った。
「早くからありがとう。」
俊之は久美子が料理を作っているのを見て言った。
「もうすぐですからね。」
久美子は言った。
最初にサラダとトーストが俊之の目に映った。次にオムレツにソーセージが見えた。果物に珈琲もあったる。
「おいしそうだね。」
と俊之は言って表情を崩したのである。
ふたりは俊之の部屋を出た。俊之は公認会計士の長島に会ってから矢島建設へ行く予定がある。久美子はトレンドカフェへ行く前に自分の部屋に行くのだ。マンションの玄関で町内会長の手塚昌弘と俊之の隣に住む主婦の糸田絹枝が立ち話をしていた。
「おはようございます。」
俊之が言った。
久美子が軽く会釈をして
「おはようございます。」
と言うと
「おはようございます。」
手塚は言った。手塚は気を使って久美子が横にいても意識しき過ぎないように振舞っていた。
「会長さんも朝から大変ですね。」
俊之が言った。それを聞いて絹枝が
「最近この辺に痴漢やストーカーみたいな変質者が出るので困っているのよ。」
と言った。
「そうですか?」
俊之は言った。
「先日も船山えりさんが誰かにあとをつけられたみたいですよ。」
絹枝が言った。
「何か対策を取らないといけないですね。」
俊之が言うと手塚は
「それの対策を考えていてね。」
手塚は困り顔で言った。
「それでしたら町内でパトロール隊でも結成しませんか?」
俊之は言った。
「それは良いアイディアだね。」
手塚は言った。
「さすが高村さんね。」
絹枝が言った。
「そんな大げさですよ。」
俊之が言うと
「首都圏大学を出ているだけの事はあるわね。」
絹江は言った。俊之は
「それはあまり関係ないですよ。」
と言った。
「早速町内パトロール隊の結成を協議しよう。」
手塚は言った
「僕も出来るだけお手伝いさせていただきますよ。」
俊之は言った。
「町内会で議決をはかってみるよ。」
手塚は言った。久美子はそんなやり取りを黙って聞いていた。俊之にはこういう一面もあったのかと改めて感じていた。
矢島は社長室で珈琲を飲みながら
「高村の話の続きだけどな。」
と言った。
「聞いているとかわいそうになってきたわ。」
早苗は言った。
「幼い頃から親には放っておかれたらしい。」
矢島が言うと。
「高村さんは不幸だったのね。」
早苗は言った。
「夕方になって友達のお母さんたちが迎えに来るのを高村は羨ましく見ていたそうだ。」
「僕は向こうの喫茶店に行くからね。」
俊之は言った。久美子は
「今夜にでも電話します。」
と言った。ふたりは駅前まで来たのである。久美子は部屋へ帰ってからトレンドカフェに出勤である。俊之は公認会計士の長島修一に会ってから矢島のところへ向かうのであった。部屋へ急ぐ久美子を俊之は見送ったがすぐに足早に歩き始めた。これからふたりの1日が始まるのだ。