雨のあとに虹 その39
「もしもし。」
俊之は言った。電話の向こうの久美子は一瞬沈黙があって
「俊さん。」
久美子のいつもとは違って思いつめたような声が聞こえた。
「久美ちゃん。」
俊之は言った。
「電話して話して大丈夫ですか?」
久美子は言った。
「元気が無いけどどうしたの?」
俊之が言った。
「ちょっと。」
久美子は外にいるのだろうか?俊之には直感でそう思った。
「外にいるみたいだね。」
俊之は言った。
「解りますか?」
久美子は言った。
「何となく解るよ。」
俊之は言った。
「夜遅くにすみません。」
久美子は言った。
「こんな時間に外に出ていてはいけないよ。」
俊之は言った。いつもの久美子とは違う様子に俊之は少し戸惑っていた。
「レインボーブリッジが見えるテレビ局の傍にいます。」
久美子は言った。
「レインボーブリッジが見えるテレビ局の傍だね。」
俊之が言った。
「はい。」
久美子が寒さに震えるような声で言った。
「そんな所にひとりでいるなんてダメだよ。」
俊之は言った。
「私の事が心配ですか?」
久美子は言った。
「それは心配だよ。」
俊之は言った。
「これから迎えに来てもらえますか?」
久美子は言った。
「これからすぐに行くよ。」
俊之は言った。俊之は電話で話をしているうちに久美子を迎えに行くべきだと直感していた。
「一時間で来られますか?」
久美子は言った。
「一時間でそちらへ行けば良いね?」
俊之は言った。
「はい。」
久美子は言った。俊之は少しだけ沈黙をして
「必ず一時間で行くよ。」
俊之は言った。
俊之は電話を切ってコートを羽織ると素早く戸締りをして部屋を飛び出していた。 マンションのすぐ前に駅があるが終電車が出た後にはタクシーは止まっていない。俊之は周囲を見回て見るが時々トラックが通るだけであった。俊之をタクシーが多く走っている大通りに出ようと考えていた。大通りに向かって全力で走る俊之を追いかけるように見慣れない乗用車が来て俊之の横まで来て止まった。乗用車の窓を開けて翔太が顔を出した。
「高村さん。」
翔太が言うと
「翔ちゃん。」
俊之は言った。
「時間がありません。」
翔太が言った。
「いつもすまない。」
俊之は言って助手席に素早く乗っていた。 翔太はスピードを上げて乗用車を発車させた。
久美子は深夜の静まり返った湾岸沿いにひとりでベンチに座っていた。純子とのやり取りを思い出していたのである。
「久美子は裏切った人を庇いたいわけね。」
純子は言った。
「そうじゃないの。」
久美子は言った。
「それならどういう事なの?」
純子が言うと
「人を裏切って復讐される人には見えないからよ。」
久美子が言うと
「どうしてそう思うの?」
純子が言った。
「解らない。」
久美子が言った。
「女の感かな?」
純子が言うと久美子は
「それもあると思う。」
と言った。
「もう身体をあげたとか?」
純子が言うと
「馬鹿な事を言わないでよ!」
久美子が言った。少し怒ったような表情をした久美子を
「どうなの?」
純子が言って覗き込んだ。
「やはり女の感なのかな?」
久美子は言った。
「はるほどね。」
純子は言った。
「その人はそんなにいやらしい悪い人ではないからね。」
久美子は言った。
「久美子も純情だね。」
純子が言った。そのあとに純子のアドバイスがこの方法をアドバイスしたのである。久美子が少し甘えたようなわがままを言ったら俊之はどうするのか?見極めろと言うのだった。無視するのか?応じてくれるのか?応じた後の態度はどうか?かなり子供騙しの方法だったが勇気を持って美子は行動に移したのだった。