雨のあとに虹 その36
三友商事のフロアーで榊原は次の一手を考えていた。自分にはあまり時間が残されていない。
「どんな手を使ってでも高村には負けられない。」
榊原は電話で沢田に言った。
「解りました。」
沢田が言った。
「高村が会社にいた時には俺は一度も勝てた事はなかった。」
榊原は言った。
「そんなに意地を張らなくて良いのではないですか?」
沢田が言うと榊原は
「今回だけは負けないしひとみはまだ利用価値がある。」
と言った。
「それは状況にもよりますよ。」
沢田が言うと
「もう少し高村の情報を集めてくれないか?」
榊原は言うだけ言って電話を切った。
「これでどうだね?」
整体の施術を終えた太田は言った。
「だいぶ身体が軽くなりましたね。」
俊之が言った。
「身体の歪みをとればそれだけ体調も良くなるよ」
太田は言った。
「身体が軽くなりましたよ。」
俊之は言った。
「残念な事に心の歪みは取れないけどね。」
太田が言うと俊之は
「心の歪み?」
と言った。
「今の高村さんに必要なのは身体の健康にだけでなく心の健康だよ。」
太田は言った。
「心の健康ですか?」
俊之が言うと太田は
「いつまでも過去にこだわっていても未来はないよ。」
と言った。
「はい。」
俊之は言った。
「12年前の事は早く忘れないといけないよ。」
太田は言った。
「12年も経ちましたか?」
俊之が言うと太田は
「禊は終わったと思うよ。」
と言った。
「そうでしょうか?」
俊之が言った。
「いつまでも高村さんが過去にこだわっていたら麗子さんも浮かばれないさ。」
太田は言った。70歳を少し過ぎた太田は父親の感覚で俊之を見ていた。考えていた俊之は小さく
「はい。」
と言った。