雨のあとに虹 その33 | 開運童子のブログ

雨のあとに虹 その33

「おはようございます。」

久美子は言った。開店時間までもう少しである。

「ちょっといいかしら?」

ひとみが言った。

「はい。」

久美子は言ってひとみが指を指した方に歩いて行った。フロアの隅に行くと

「例の高村さんとはどうなっているの?」

ひとみは言った。

「先日食事をしました。」

久美子は言った。

「あれはもういいわ。」

ひとみが言う。

「もういいって?」

久美子が言うと

「もう普通にしていて。」

ひとみは言った。

「そういわれても!」

久美子が言うと

「中年男が本気になるとしつこいから普通のお客として扱っていいわよ。」

ひとみが言った。言い終わるとひとみはさっさと持ち場へ着いたのである。久美子はなんとも割切れない気持ちになっていた。確かに最初は興味本位で俊之に親しくしたがそれは最初だけである。ストーカーの及川に付きまとわれたとは違って俊之にアプローチしたのは久美子の意志でもあったのだ。自分の気持ちはどうなるのだろう?ひとみは自分の気持ちは考えてくれなかったのだろうか?自分が俊之と親しくした事がひとみにとって何か意味があるのだろうか?少なくても自分には何かがあるように思う。そう考えていた久美子はこれから何かが始まるような気がしていた。そんな複雑な気持ちを抑えて久美子は持ち場へ戻って仕事が始まった。

「いらっしゃいませ。」

久美子は言って顔を上げた。見ると及川がニヤニヤして立っていた。久美子は背中がゾクッとするのを覚えていた。

「堀川さんはこっちをお願いね。」

小百合が言った。久美子とさゆりが入れ替わっていた。ひとみも異様な空気を悟って

「どうしたの?」

と言った。

「それは経営者側の都合ですよ。」

俊之はいつになく厳しく言った。

「そうですか?」

織田は言った。

「社員を雇用する以上は条件をきちんと提示しなければいけないですよ。」

俊之が言った。

「結果が良ければ給料だって上がるし歩合でもいいと思います。」

織田は言った。

「それでも最低労働賃金を支払わないとダメですよ。」

俊之は言った。それでも織田は

「そんなものですか?」

と言う。俊之は

「正社員に時給はありえないですよ。」

と言った。

「条件は良いと思うけどね。」

織田は首を傾げて言った。

「織田さんが望むのは社員ですよね?」

俊之は言った。

「そうですよ。」

織田は力なく言った。

「共同経営者ならそれでも良いけれど社員は守られているわけです。」

俊之が言っても

「うん。」

と織田は言うだけだった。

「みんな就職に来ているわけです。」

俊之が言った。

「それは解るけどね。」

織田が言うと

「経営をしたいと思う人は面接には来ないで会社を始めますよ。」

俊之が言うと織田は

「そうなものかな?」

と言った。

「社員のみなさんは就職のために来る事をよく理解してください。」

俊之は言った。

「もう帰ったみたいよ。」

小百合は言った。

「ありがとう。」

久美子が言うと小百合は

「お互い様よ。」

と言った。

「背中がゾクッとして動けなかった。」

久美子が言った。

「あの人顔は良いから普通にしていればもてるのにね。」

小百合が言った。

「そうかな?」

横からひとみが言った。