雨のあとに虹 その24
「どうですか?」
久美子が言うと
「さっき帰ったよ。」
小百合が言った。
「それはよかった。」
久美子はほっとして言った。
「良い顔をしているのにね。」
小百合は言った。
「でも目つきが普通じゃないでしょ?」
久美子が言った。
「ストーカーみたいな事をしなくても良いのにね。」
小百合が言った。
「どうしてここが解ったのかしら?」
久美子は言った。
「ストーカーなんてそんなものよ。」
小百合はあっさり言った。
「少し恐いですね。」
久美子が言うと
「前日パスタをこぼした中年の方がましよね?」
小百合が俊之の事を言った。
「俊さんの事?」
久美子が言うと
「あの中年がもっと若ければいいのにね。」
小百合が遠慮なく言った。
「近いうちに彼女をデートに誘ってみたらどうですか?」
翔太が言った。
「早く誘いなさいよ。」
未来も言った。
「誘った方が良いのかな?」
俊之が言うと
「それは当たり前でしょ?」
未来が言った。
「ぼくはこれから野暮用がありますのでね。」
翔太は言うと足早に去って行った。
「翔ちゃん!」
俊之が言うと翔太は右手を上げた。
「急に来て急に居なくなったね。」
未来は翔太の後姿を見て俊之に言った。
「翔ちゃんはいつも突然現れて突然去っていくからね。」
俊之が言った。
「これから彼女を誘ったらどうなの?」
未来に言われて
「そんな事を言われると僕は本気になりそうですよ。」
俊之は言った。ふたりは駅の雑踏まで来たが日は完全には沈んでいなかった。
「もしもし。」
久美子が電話に出て言った。ちょうど休憩が終わる直前にかかってきたのだった。
「久美ちゃん!」
俊之は言った。
「俊さん。」
久美子は言った。久美子は俊之からの電話に少し驚いていた。
「電話で話しても大丈夫かい?」
俊之が言うと
「休憩中だから大丈夫ですよ。」
久美子が言った。
「それはよかった。」
俊之は言った。
「今何処からですか?」
久美子が言った。
「少し遠くに来ているけどこれから戻るところだよ。」
俊之が言うと
「遠くなのに電話をもらって嬉しいです。」
久美子が言った。
「急だけど時間があったら食事でどうだろうと思ってね。」
俊之は言った。
「本当ですか?」
久美子が言う。
「本当だよ。」
俊之が言うと
「それなら1時間後くらいでこちらへ来られませんか?」
久美子が言った。
「そちらのトラベルカフェにかい?」
俊之が言う。
「その時間なら仕事が終わりますから珈琲でも飲みに来てください。」
久美子が言うと
「1時間後に会おうよ。」
俊之は言った。
「待っていますね。」
久美子は言って電話を切った。今の久美子は俊之からの誘いに嬉しさでいっぱいになっていた。久美子はまたいつ及川が襲ってくるかという不安があったのだが俊之の誘いがあった事は遠まわしに寂しいから会いたいと言われたようで母性本能をくすぐられたような気持ちだったのだ。俊之の声は及川への不安を和ませてくれていた。俊之は中年なのにどこか可愛いところあるのを久美子は知っていた。それと同時に先ほど及川が店に来たこともあり不安と嬉しさが複雑に久美子の頭を交差していた