雨のあとに虹 その21
「ご注文は何になさいますか?」
久美子はカウンターで並んでいるお客さんに言った。
「ありがとうございます。」
と横で小百合が言った。今日は店長のひとみが休みの日である。
「お次のお客様どうぞ」
久美子が言った。
「お客様ご注文は何になさいますか?」
小百合が言う。混雑した時にはチームプレイが必要なのだ。
「ありがとうございました。」
久美子が言うと小百合も
「珈琲をお待たせいたしました。」
と言った。ふたりは次々にテンポよくこなしていった。
「お次のお客様!」
久美子は言って息をのんだ。昨日久美子に襲いかかった及川友宣が列に並んでいた。
「堀川さんはこちらをお願いします。」
小百合に言われて久美子は後ろを向いた。
「私の代わりにやって!」
小百合は言った。後ろの久美子は後ろの仕込みに変わった。これは事前に久美子の相談を受けた小百合がうまくやってくれたのである。
「お待たせいたしました。」
小百合が言った。及川が
「ちぇ!」
と舌打ちした。
「ご注文は何になさいますか?」
小百合に言われて
「ブレンドをひとつ。」
及川が言った。
「思ったより早く終わりましたね。」
俊之が言った。あすなろ会での行事が終わって駅の方に歩きながら
「子供相手だからそんなに遅くなれないしね。」
と未来が言った
「子供たちに喜んでもらえたかだろうか?」
翔太が明るい表情で言った。
「みんな喜んでくれたわよ。」
未来が言った。
「そういえば昨日ちょっとハプニングがありましてね。」
翔太が言った。
「ハプニングって?」
俊之が言う
「人気のない所で女性を襲った奴が居ましてね。」
翔太が言うと
「時々そういう変な男がいるのよね。」
未来が言う。俊之は
「その女性は20歳くらいじゃなかった?」
と言った。
「20歳くらいですね。」
翔太は言った。
「犯人はどんな男なの?」
未来が言うと
「及川友宣と言う24歳の男でしたよ。」
翔太が言うと
「やはり翔ちゃんだったね」
俊之が言った。
「彼女は高村さんのお知り合いでしたか?」
翔太が言った。
「高村さんにもそんな若い知り合いがいたの?」
と未来まで冗談半分に言った。
「そうじゃないよ。」
俊之が言うと
「嘘言ってもダメよ。」
未来が言った。
「聞かせてくださいよ。」
翔太も声を大きくして言った。
「駅ビルのコーヒーショップでミートソースを運んで来た久美ちゃんが誰かに押されてバランスを崩してね。」
俊之が言うと。
「その女性が高村さんのズボンにこぼしたのね?」
未来が言った。
「そうです。」
俊之が言うと
「それは絶対に脈がありますよ。」
翔太が言った。
「がんばりなさいよ。」
未来が言った。
「そうかな?」
俊之が言うと。
「決まっているじゃないの。」
未来が言った。
「そんな事言っても僕は46歳のおじさんだよ。」
俊之が言うと
「年齢は関係ないわよ。」
と未来が言った。
「僕もそう思いますよ。」
翔太も言った。俊之は
「そうだといいけどね。」
と言った。
「あの時は怪しい男を見かけたので警戒してよかったですよ。」
翔太が言った。