雨のあとに虹 その18
「いや!」
久美子は声を出した。急に男が抱きついてきてナイフを久美子の腰にあてた。駅からの帰り道で人通りが少なくなってきた時であった。周囲には通行人がいない大通りから横にそれた小道であった。
「静かにしろ!」
男が言った。
「やめて!」
久美子は抵抗しながらも声を出した。男はナイフを久美子の腰にあてたままだった。その時である。
「やめろ!」
と別の男の声がし男は地面に叩きつけられた。
「痛てえ!」
と男が声を悲鳴のような声を上げるのにそんなに時間はかからなかった。久美子は男を見た。男が腹部を押さえて倒れているのが久美子の目に映った。 久美子は何が起こったのか解らなかった。倒れた男を見るとそれが大学で久美子に声をかけてきた男だった。その男を抑えつけていたのは翔太であった。
「大丈夫ですか?」
翔太が言った。
「はい。」
久美子が言うと
「この目つきが悪い男があなたのあとをつけていたのでね。」
翔太が言うと
「その人は大学で声をかけてきた人です。」
久美子は言った。
「おとなしくしてろよ。」
と言った翔太の迫力に男は抵抗できなかったのである。
「高村さんもこれから楽しく僕たちと仕事しましょうよ。」
すっかり酔った田崎が言った。
「僕もそのつもりだよ。」
俊之は言った。
「社長も参加できればよかったけどね。」
みどりが言った。
「矢島は忙しいから仕方がないよ。」
俊之が言うと
「せめて途中から来てくれても良いのに!」
みどりが言った。居酒屋で楽しい苦騒ぐのは俊之だけではなく田崎もみどりも久しぶりだったようだ。
「うちの会社も高村さんのような人が来てくれて楽しくなりますね。」
田崎が言うと
「高村さんが社長の同級生なのがやりやすいわね。」
みどりが言った。俊之は田崎とみどりにすぐに打ち解けていたのだった。