雨のあとに虹 その17
「長く話してしまってすみません。」
久美子は言った。
「いや!気にしなくていいよ。」
と俊之が言った。
「突然で驚きませんでしたか?」
久美子が言うと俊之は
「少し驚いたけどね。」
俊之が言う。
「また電話しますね。」
久美子が言った。
「時間がある時には僕からもかけるよ。」
俊之が言った。会話が終わって久美子は通話を切ったあとに
「どうだった?」
純子が覗き込んで言った。
「普通の会話だよ。」
久美子が言うと
「それは解るけど」
純子は言った。
「会話を聞いていたくせに!」
久美子が言う。
「そうだけどね。」
純子は不満そうに言った。
「純子が電話かけろって言うからかけたけのよ。」
久美子が言うと
「ずいぶん緊張していたね。」
純子が言った。それを聞いて久美子は
「それはあたり前じゃないの!」
と言った。
「その人と仲良くしていると就職に有利かもしれないよ。」
純子が言うと久美子は怒ったように
「何を言っているの!」
と言った。久しぶりの緊張感に久美子の心臓は鼓動を早めていた。都心のおしゃれな街に溶け込んだ久美子と純子が大人の女性として映っているひと時であった。
「高村さんの電話の相手は女性みたいでしたね。」
田崎が言った。
「そうだよ。」
俊之は平然として言った。
「今日はデートの予定だったのですか?」
と田崎は心配になって言った。
「そんな事はないよ。」
俊之が言うと
「ちょっと意味深のご様子でしたよ。」
田崎が言った。
「ちょっとアクシデントがあってね。」
俊之が少し照れて言った。
「やっぱり訳ありだったのですね。」
田崎に言われて
「そんなに人生は甘くないよ。」
俊之が言った。
「恋ってある日突然やって来るものですよ。」
と田崎が偉そうに言うと
「でも相手は20歳くらいの女性だよ。」
と俊之が言った。それを聞いていたみどりが
「意外性があるのが恋ですよ。」
と会話に入ってきて言った。
「そうですよ。」
と田崎が言った。
「そうかな?」
俊之が言うと
「年齢って関係ないですよ。」
田崎が言った。
「男の人はどうして形にこだわるのですか?」
とみどりが言うと
「別にこだわってないけどね。」
俊之が言った。俊之は早速社員に溶け込んだように見えるのであった。久美子が電話をしてきた事は俊之の心を少しだけ和ませていた。そして矢島建設の会社の社員とも初めて親しみをもつ事ができた瞬間でもあった。
「誰なの?」
船山えりは言ったが周囲は静まり返っている。大通りを通れば良いのに近道をして寂しい道を歩いていた。自分の足音とは別に足音が聞こえたえりは恐くなって走り出した。