雨のあとに虹 その3 | 開運童子のブログ

雨のあとに虹 その3

「本題に入ろう。」

と矢島は言った。

「お前にうちの顧問に入ってもらいたいと思っている。」

矢島は明確に言った。

「僕で良いのか?」

俊之が言うと

「頼むよ!」

矢島は言った。

「僕でよければ引受けるよ。」

俊之は言った。

「会社経営を抜本的に改善したいと思っているので協力してほしい。」

と言った矢島の決意は固いようだった。

「がんばってみるよ。」

俊之は内心驚きながら言った。矢島は2代目の社長だがしっかりとした経営手腕があるのだ。その矢島が俊之の力を必要としていた。

「頼んだぞ。」

矢島がいつになく真剣な目をして言った。

「高村さん。」

と若者の声が聞こえた。俊之が矢島建設を後にして繁華街を抜けた先にある小さな公園の前に来た時であった。

「翔ちゃんかい?」

俊之は待っていたように言った。笹川翔太は物陰から出て来て

「アポが取れましたよ。」

と言った。

「いつもすまないね。」

俊之は言った。

「いいえ。」

翔太が言うと。

「千晴も高校生だから忙しいかもしれない。」

俊之は言った。

「明後日の16時ジャストに駅前の喫茶店で会えるそうです。」

翔太が言うと

「変な事を頼んですまなかったね。」

と俊之が言と

「気にしないでください。」

翔太は明るく言った。

「僕が直接連絡をしても返事を無もらえないのでね。」

俊之が言うと

「こんな事でよかったら言ってください。」

翔太が言った。

「翔ちゃん少ないけど」

と言って俊之は封筒を翔太のポケットに入れた。

「いらないですよ。」

翔太が言うと

「そう言わないで気持ちだから。」

俊之が言った。

「僕と高村さんの中じゃないですか。」

翔太がさらに言うと

「いいから受取ってよ。」

と俊之は言った。

「でも!」

翔太は言うが俊之は

「いいから。」

と言った。

「それならありがたく受取りますよ。」

翔太が言って封筒を受取った。

「それでは!」

俊之は言うと足早に夜の闇に消えて行った。

「今日は来ないよね。」

久美子は呟いた。

「いらっしゃいませ。」

と大石小百合が言って接客している。昨日の今日だから俊之がトレンドカフェに来なくても不思議はないのだ。ひとみに俊之が来たら話しかけて親しくコミュニケーションを取れと言われても意識すると難しいのだ。年齢も違うし話がかみ合うだろうか?カウンターに立って入って来るお客さんを見ながら余計な事を考えてしまうのだ。俊之が来たらどんなタイミングで話しかけようか?と意識するうちに中年男性はみんな俊之に見えてきてしまう。

「そんな事ではいけない。」

久美子は呟いて自分を戒めた。

「いらっしゃいませ。」

と小百合がいって

「こちらへどうぞ。」

久美子が言う。

ひとみは横から久美子を見ていた。

都心のIT関連企業であるイーエンジニアのフロアーで俊之は仕事を終えて声をかけた。

「織田さん。」

俊之が言うと社長の織田和夫は

「はい!」

と言って俊之の方を見た。

「今日はこれで終わりますけど他に何かありますか?」

俊之が言うと織田は

「今日は無いよ。」

と言った。

「次は来週に顔を出します。」

俊之は言った。

「来週は僕がいないかもしれないけど解るようにしておきます。」

とが言うと俊之は

「織田さん早いけどこれで失礼します。」

と言った。

「お疲れ様でした。」

織田は言った。

「お先に!」

俊之が言うと周囲の社員が俊之を見て会釈をした。社員のひとりである野村孝志が

「お疲れ様でした。」

と俊之に言った。俊之は

「次は来週になります。」

と言って外に出た。秋が深い季節になっているのは吹いてくる風の冷たさで解る。俊之は駅に向かって歩いていった。