例の院生のお姉さんが、たまに色々と聞いてきた。私は、絶対に先生の事は言わなかった。この人、しつこかった。私の事を、心から嫌ってはったから、ちょっと怖かった。


何を聞かれたかというと…

  

どんな人から郵便物が届くの?

→さぁ?いちいち見ていない。


最近は、☓☓先生は何について執筆しているの?

→さぁ?いちいち覚えていない。興味がないから、頭にも残らない。


どの先生がよく訪ねてくるの?

→さぁ?名前を知らないから分からない。


こんな事をしつこく聞いてきた。正直、論文に関しては、この人パクるんじゃないかと思ってしまったぐらい。これは、一応、先生には言っておいてあげた。どうしようか悩んだけど。先生は…


あっ、そうなの?教えてくれてありがとう。


と、言いはった。口が避けても何も私は言ってないから…と言ったら、笑いながら…


君、そんな事はいちいち言わなくてもわかっている。君さ、本当に口がかたいよな。俺が何気に、君の専攻の○○さん、最近は何をしているかちょっと聞いただけで、さぁ?って言うよな。隠すことでもないのに。


と、言われた。


確かに…。


隠す事ではないけど、なんとなく。その先生の部屋にも頻繁に出入りしていたから、なんとなく…。


院生のお姉さん、先生の事を知りたかっただけなんだろうけど。私には、スパイに見えたわ。


こういう日は、気がしんどくなった。その矛先は、先生に向けられて、お茶を淹れてくれ…と何度も先生をアゴで使った。


君さ、口はかたいけど、やっぱり偉そうだな。と、笑いながら、何回もお茶を淹れてくれはったけど。