あれは、私が七つの時でした。学校でひらがなを習って全部書けるようになった時です。
風がいつもより強くて、外に遊びに行くのを母に止められました。
「今日は、とても寒いから、家の中で遊びなさい」
いつもなら、表通りを駆けて行くズックの足音や楽しげな叫び声がします。けれど、その日は木枯らしの口笛だけが聞こえていました。
私は母の言いつけを守りこたつの中にいました。退屈だった私は、広告の裏に絵を書いたり、ひらがなを書いたりして遊びました。
「あら、ちーちゃん字が書けるの?すごいわね」
と言いながら母は、私が書いたひらがなを、のぞき込みました。
私は、誇らしげに形がゆがんだり、つぶれたりしたひらがなを母に見せました。
「字が書けるようになったなんて、いつの間にこんなに大きくなったのかしらね」
母の瞳が少しうるんでいたような気がしました。
私は、外はとても寒いけれど家の中は春のような暖かさと雰囲気に包まれていると思いました。
そして、ひらがなを書けば、こんなにほめてもらえて、喜んでもらえるのなら、天国のおじいちゃんにも見せたくなりました。
いつも私をひざにのせて
「お前は、わしの宝物だ」
と、頭をなでてくれたおじいちゃん。
私は、新しい広告の裏に ひらがなで おじいちゃんに初めての手紙を書きました。
おじいちゃん おげんきですか
てんごくは いいですか
わたしは おべんきょうしています
また あそびましょう
ちえこ