本当は、知ってた。

気付いてた。

もしかしたら、もう

生まれてるんじゃないかって。



旦那も知ってた、でも

私が取り乱さないように

みんなで優しい嘘をついてくれてた。


お腹の子をへその緒から
解くためじゃなくて、
胎盤が上手く出ないから
麻酔して手術してる事も、
知ってた。


きっと今、あっちのカーテンの奥で
私の赤ちゃんは
何かしらの『処置』を
されてるんだろう。

…知ってた。




処置が終わると

看『赤ちゃん出たよ、
血とか拭いて
綺麗にしてくるねっ』

そう言って
一気に分娩室から人が消えた。



おめでとうも、
祝福もない、
静かな出産だった。

祝われる為に生まれてきたのに
誰にも言ってもらえない。

お腹の子を考えると
胸がちぎれそうになった。




旦那『大丈夫?』

私『もう、全然。』

旦那『無事で良かった』

私『泣いてしまった』

旦那『…俺も!』

私『知ってる(笑)』

旦那『…』

私『…』





すぐに、あの、綺麗な助産師さんが、
カーテンの向こうから顔を出して
声をかけてくれた。


助『赤ちゃん、会います…?』


私『…いいんですか……?』


泣き止んだ筈の目に
また涙が滲む。


助『もちろん、もちろん!
赤ちゃんもきっと、嬉しいよ!』


私『会いたいです』
旦那『俺も!』

言わなくても大丈夫だよ、旦那。



ネットやブログでは
対面しないままお別れした方もいた。

万が一我が子を
気持ち悪いと思ってしまったら…

合わない方が傷も深くないとか…


そんな感情にならない確証なんてない。

でも私は会いたかった。

顔が、見たかった。