部屋に戻ると
もう窓の外は真っ暗で。

看護師さんが体を支えながら、
ベッドに座らせてくれた。

片尻継続中。



看『もうすぐ、
お食事の時間ですので。』


身も心もボロボロって
こういう事だろうか。



私『ありがとうございます。』



優しい優しい看護師さんが
部屋を出ていくと、

ポロポロと涙がまた溢れた。



しっかりしろ、わたし。

しっかりしろ、わたし。



こんなの、

お腹の子の苦しみの

一割にも足らない。





〜ポキポキ♪


スマホが光る。

旦那だった。

不自然な体制のまま、

返事を返す。



仕事終わりに面会に滑り込んだ様で、
病室の番号の確認のメッセージだった。


旦那が部屋に来た頃には
膣の痛みは薄れて、
代わりに、生理痛の様な
下腹部痛が始まっていた。


旦那『病院の飯、足らねーだろ』

ドンとコンビニ弁当が置かれた。

私『…お腹減ってない。』


旦那『処置、終わったの?』


私『うん。』


旦那『…大丈夫じゃなかった?』


私『大丈夫じゃなかった。』


旦那『…』


私『…』


旦那『…』


私『激痛だよ、激痛。
暴れて迷惑かけてしまった。』



旦那『何で片ケツで座ってんの?』



私『痛いからだよ!
股に何か沢山入ってるからだよ!』



旦那『…ごめん、食べていいよ』



私『だからいらない!!』


八つ当たりタイムに突入しかけて、
笑ってしまった。

やっぱりわたし、
旦那に会いたかったんだ。


旦那『…ねえ。』



私『なに?』




旦那『食わないなら食ってい?』



私『ダメ、わたしが食べる。』



旦那『俺何食べるの?』



私『病院食。』



旦那『ヤダ!』



私『だが、断る!』


いつものやり取り。

戯れてる間に、

やっぱりわたし、

泣いてしまった。



旦那は黙って肩を抱いて
頭を撫でてくれた。



旦那『明日明後日休み取れたから。』


私『うん』


旦那『変わってやれないけど。』


私『うん』


旦那『産む時も隣にいるから。』


私『うん』


旦那『長女の時も
そうだったし、
じゃないと、
お腹の子だけ可哀想だろ?』



私『うん…ありがとう…』



旦那『今日はこのまま
長女迎えに行って、
明日長女とくるか…』



面会終了の合図が流れる。



もっと居たかったけど、
別に話す事なんてなくても、

お腹の子を想ってくれてる人が
そばにいるだけで、

こんなに違う。



私『うん。ありがとう。』


旦那『じゃーな、また明日な』


私『おやすみ』


旦那『…』


私『?……なに?』


旦那『いや…なんか…
お腹、下がった?』



私『……』



お腹に視線をずらす。
言われてみれば。

でも、こうしてる今も、
赤ちゃんはお腹を蹴ってる。




旦那『パパ明日もくるからなー』


おなかにも声をかけて
旦那は病室を出て行った。



初めて2人きりの夜。

たくさん話しかけてあげよう。

たくさん声をかけてあげよう。

たくさん、撫でてあげよう。