前日、夕方5時ごろ義母から電話がある。


〝みんな元気?
TとOの声が、聞きたいなと思って〟


との事。
息子2人だけの声?


皆まだ学校である。


〝M君の(義妹の亡くなった旦那様)事があり、Kちゃんは体調が悪くなり、今日は仕事を早退したのよ〟


Kちゃんは義妹の息子で、発達障害であり現在21歳。
食品メーカーの工場で働いている。
バイクで迎えのバスまで通勤しているし、車の免許も持っている。


〝Kちゃんはいつも無表情だし感情を出さない。だから体が悪くなる。泣いたらいいのよ。TもOも泣いたらいいのよ〟


まだ泣く事が出来ないのだが。


息子を亡くし、娘婿を亡くし、たまらないのであろう。


来客との事で、話終わらないうちに電話を切った。




次の日の早朝5時。
義母から電話がある。
お弁当を作っていた私は、起きていた。


何があったのかな?



〝満中陰志の、手渡しの品が届いたから取りに来る?〟


早朝5時だ。
大変だ、多分少し精神的に良くないんだろう。


〝おかあさん、今日は車の売却の件で行く予定ですから、行きます〟


と言って電話を切った。


私の母はよく墓に参る。


今日義母と一緒にお墓まいりをしよう。
と決めた。


私の父母にお願いして、庭の花をたくさんもらい持って行く用意をした。


午前中に参りたいので、早めに出発し、11時ごろ着いた。


いつものように黙って入り、夫の位牌に手を合わせる。
台所に挨拶をする。
来客の多い家なので、いつ行ってもきれいにしている。


〝花を持って来たので、お墓まいりを一緒にしませんか?〟


喜んでくれると思っていた。


〝今から?私はよく行っているのよ〟


乗り気ではないようだった。


私の持って来た花を見て、


〝こんなに買ったの?〟


買いすぎだと言わんばかり。


〝実家の庭の花です〟


〝こんなにあるの?〟


〝半分仏壇、あとはお墓に持って行こうか〟


と行く気になったようだ。


〝突然どうして?〟
と聞かれたので、


〝昨日と今朝早朝に電話があったので、心配しました。辛い時はお墓まいりがいいと思いました〟
と話すと、


鬼のような形相になり、

〝お墓、参ってます!〟


と声を荒げた。


びっくりする私。


驚いて、


〝一緒に行ってないから、朝5時から電話があるから普通じゃないと思って考えてきたんですよ〟


と言うと、



〝そのために来たの?〟
と不満顔。


〝満中陰志も取りに来ました。届いているんですよね〟


〝届いてないわよ〟
〝電話してみようか?〟


〝お母さんが届いたと、今朝電話をしてこられました〟


〝電話してみる〟


さっきと違い、慌てている。


電話を終えると、
仏壇に花を飾り、お墓用に2つ束ねお墓に向かう。



途中、
〝先に車の用事を済ませてお墓まいりをしよう〟
となった。


買い物がしたいからと、コンビニで義母をおろし、一人で車屋さんに行き用事を済ませた。

すぐコンビニに行くと、外で地面に腰を下ろして待っていた。
こんな光景初めてだ。


お墓に参るまで、参ってからも、ずっと自分の話をしていた。ずっと。



お花をキレイにして、お線香をあげて家に帰る。



義父が、お昼ご飯に帰っていた。


3人でコンビニのお寿司を食べながら話す。



二人はあまり仲良くない。
黙って心の中で争っていた二人だが、夫が亡くなってからは、お互い言いたいことを言い合い、なかなかのものだ。
私は義父には優しくしてもらってきたし、今も変わらないが、義母は、私も周りも全て気に入らないようだ。


不機嫌なことはあったが、こんなに攻撃している姿は初めてだ。


父が建物の検査に向かうと。


〝満中陰志が来たら帰宅しよう〟

と話し、義母の話を聞いていた。



夫の話。
みんなに、


おしい


あんな優秀な奴はもういない


早い


など、満中陰志のお礼がてら、たくさんのお悔やみをいただいているとのこと。


もう、私の夫であったことより、我が息子になっている。


だんだん、私も嫌な気持ちになる。
不愉快な気持ちになる。


私の事、不満がたくさんだったのだろう。



こんなに良い息子だったのに、である。

やはり、他人なのだ。

義妹の旦那様がなくなり、娘も義母の元に心が戻った。


満中陰志を受け取ると、帰る事にする。


しばらく、私は必要ないようだ。



心が、はなれるおとがした。