重陽の節句にぴったりの演目
常磐津 菊の盃 

曲の構成がドラマチックで
大好きな演目の1つ ラブラブ


内裏の神苑に曲水の宴が張られ
秋の夜遊びの趣き
様々な菊が咲き薫り
月の光に照りそう紅葉
比叡山の高嶺より
涼やかな秋風がそよぎ
その枝を揺らす
曲水の流れも月に輝き
流れに浮かぶ盃が流れ来たり去ったり
時の移ろいも忘れ一晩中の酒宴となる
盃に菊の花びらをたたえ
月の雫と共に盃を重ねる
            
平安王朝の文化のみが描き得る
「重陽の節句」の雅やかさを
道具を飾り立てず衣裳を着飾らずに
日本舞踊の形式の1つ「素踊り」
という形で表現

後半曲水に写る大盃の影が
月の影と重なった時

場面は時間がワープする様に
「猩々」という架空の生物の
不思議な物語に転じます


見所は
前半の宮廷の雅な情景から
後半「猩々舞」の動き変化の
コントラスト

祝言能(お祝いの際に舞われる能)
の内の一曲「猩々舞」を踏襲して
昭和29年に作られた
品格の有る演目なんです




















 


常磐津 「菊の盃」
長谷川幹彦 作詞  
常磐津菊三郎 作曲

《 歌 詞 》
菊の香も黄菊白菊百代草 
薫内裏の神苑に紅葉照りそふ神無月 
比叡の高嶺金風の
おもかげ写す曲水の流れたゆたふ 
盃に菊をたたえて夜もすがら 
月の雫と諸共に又傾くる大盃の
影を重ぬる不思議さよ

在りし世の潯陽江のかたほとり
月の世頃に菊薫る 
げにも似たりや月影も
羊唾の市の物語 
老いせぬやこれ百薬の長にして
齢を延ぶる菊の水
 
夜毎夜毎の幻に 
水の底より湧き出でて
大いなる瓶をば据えて唯1人 
歌いつ舞ひつ夜もすがら
芦の葉末を笛になぞらえ
打ち寄する波は鼓のしらべ
あら面白の舞の手振りや 
汲めども尽きぬ飲めどもつきぬ曲水の
月も傾く菊の香に

げにや9日の菊の香も 
幾世重ねて四十年を
栄え栄えて常盤木の 
つきせぬ家こそ久けれ