踊り手にとって
無くてはならない
大切な「舞扇」


その昔
アメノウズメが
天の岩戸の前で踊った時に
採り物として手にしていた
「オガタマノキ」が「扇」の起源


その「扇」と手拭いが有れば
大抵の物は踊れてしまう位
「扇」は何にでも
変化させることの出来る
また踊り手自身をもそれによって
変身させて貰える優れもの


閉じたまま使えば
笛・杖・刀・傘等に


1枚開いて二等辺三角形にすると
羽子板・徳利・手紙等に


全部開いて平面にすれば
本・笠・建具・鏡・桶等に


又開閉と動作を組み合わせると
簾になったり
花が開いたり
風や雷の自然現象
太陽・月・山などの風景

森羅万象に至り表現は
工夫次第で無限です


そして扇の先を
自分の手の先だと思って使うと
実物より踊っている時の印象の方が
大きく見えるという魔法も


「扇」は
お稽古や舞台で踊る前の挨拶の時
自分と師匠
自分と観客との間に
閉じた状態で置いてお辞儀をします

これは自分と相手との間に
「結界」(元は仏教用語)
といわれる精神的な境界線を引く
という意味合いが有り
謙虚な姿勢で踊りますという
心が形に表れたその凛とした姿は
扇が単なる道具という以上に
踊り手にとって
神聖な心の有り方の象徴と
言う意味合を担っているのです





いにしえに ウズメが舞に 携えし

オガタマの枝 扇と成りぬ  廸薫