身近な「なぜ?」 「なぜなぜ分析」

 

前回の記事で「なぜ?」の掘り下げが大切であると提言しました。

私の中で一番身近だった「なぜ?」は「なぜなぜ分析」です。皆さんは聞かれたことはありますか?

 

本題に入る前に、今回は「なぜなぜ分析」についてお話しておきたいと思います。日常業務に使える手法なので、是非習得してください。

薬局の業界で耳にするなら調剤過誤などの事故が起きた時の是正措置を考える時が一番想像しやすいです。

これは根本的な原因を明確にするための手法です。製造工場などでは比較的メジャーに使われていると思います。

「なぜ?」を5回繰り返せば根本的な原因が見えてくると言われています。折角なので、以下の調剤過誤を例に実践を見ていただこうと思います。

 

 

 ケーススタディ

 

例:オルメサルタン錠20mgの処方であったところ、10mgの規格のもので投薬してしまった。5回「なぜ?」を繰り返して根本的な原因を考えてみましょう。

 

Why① なぜ誤った規格で投薬してしまったのか?

ピッキングは合っていたが、鑑査の機械でエラーが鳴って、機械に表示された規格のものを取り直してしまった

 

Why② なぜ機械のエラーが鳴ったのか?

入力が間違えていたために機械のエラーが鳴ったが、入力が正しいかどうかの再確認を怠った

 

Why③ なぜ入力の再確認を行わなかったのか?

入力のチェックは他の薬剤師が実施済みであったため(そこで間違いに気づけずスルーした

 

Why④ なぜ入力ではなく、ピッキングが間違えていると判断したのか?

ピッキングのみダブルチェックができていなかったため、先入観で判断してしまった

 

Why⑤ なぜピッキングのダブルチェックをしなかったのか?

本来処方箋とピッキングのダブルチェックをするところを、機械との照合をダブルチェックとしてしまった

 

ちなみに、Whyの問いが上手くないと、出したい答えにたどり着けません。何度も視点を変えてWhyを繰り返すと原因が浮き上がってきます。

 

ついでに再発防止策の話に広げてみようと思います。Whyとその答えの例を挙げてみましたが、皆さんならこれに対する再発防止策をどのように考えますか?

 

 ミスの原因の本質を考える

 

皆さんの考えた再発防止策に、「チェックで見逃しが無いように注意する」といった内容を考えた方はいませんか?

このような是正措置などのシステムに携わっていた人間からすると、申し訳ないですがその視点は0点です。

 

ヒューマンエラーはどうしても起きてしまいます。管理者側が考えるのは、ヒューマンエラーを無くすのではなく、起きてしまったヒューマンエラーを検出してそのまま次のフロー(この場合投薬)に行かないようにすることです。

先ほどやってみたなぜなぜ分析のフローのなかで、赤字で示したミスはニューマンエラーです。青字で示した部分は手順不履行や手順の不備によるミスとなっています。よって是正措置を取るべき個所は青色の部分になります。

私なら以下の2点をミスの原因と考えます。

  1. 鑑査機器を信用して再ピッキングしてしまった(手順の不履行)
  2. 先入観で判断してしまい、エラーの原因を明確にしていない(手順の不備?)
手順がどうなっているかは前提に無いので分かりませんが、恐らく機械でエラーが出たときの手順までは定めていないだろうと思い、「手順の不備」としました。もし手順があるのであれば、「手順の不履行」が原因になります。
そして、再発防止策の例として以下の2点を挙げます。
  1. ピッキングされた薬剤は処方箋と照合してダブルチェックを行うこと
  2. 鑑査機器でエラーが起きた時は何が原因でエラーになっているか入力と薬剤の両面で再チェックする

 

なお、ダブルチェックでスルーしてしまうのも残念ですが、どうしても人が行うことなので、完璧にはできないと考えた方が良いです。ヒューマンエラーを減らすのではなく(もちろんそれも大切ですが)、エラーを検出してスルーしないシステム作りが是正措置で一番大切なのです。

 

原因を「ヒト」に着地させるのは、手順に従わずにミスをした時であり、最終手段です。ヒトに原因を着地させた場合は、教育で解決できるものかを評価し、再発のリスクに応じてその人の業務の範囲を限定したりと工夫しないと何度も似たようなミスが続いてしまいます。

この業界人手を十分に確保することも難しくなってきているので、なるべくルールや業務フローで解決できるのがベストだと思います。

 

この思考フローは、ISO9001やGMPにある品質管理の考え方を引用しただけです。

 

私はサラリーマン時代に「なぜなぜ分析」に触れることが何度もあったため、自然と「なぜ?」を繰り返すようになりました。

その発展形で、薬剤師が行っている業務の目的や意図など、「なぜ?」を繰り返し、自分なりの答えを探してきたのです。それが正しいかは別の話ですが、私なりに納得して業務に当たっているし、応用も効きます。また、後進の指導の時にも自信を持って理由を伝えられるので、結構説得力を持たせることができるんですよね。何より自分の判断がぶれなくなったので、お勧めしたいです。

 

今後も数回なぜ?シリーズは続きます。次回は6/7(金)に投薬までにスピードが求められているのはなぜか?という話題で記事を書こうと思います。

皆さんには、できればそれまでに「受付から投薬までのスピード」について、どのように考えられているか、考えてきてもらえればと思います。