めだか屋で奮闘しまっせ (フィクションです)

 

 

第二十一話 消せない夢の巻(1)

 

 冬場、めだかの家は土日だけの営業とし、召田輔(めだすけ)はしょんぼりしながらめだか作りを、あかねは少しでも通販で売ろうと、情報の提供やめだか同好会の資料収集、人気品種の調査など営業活動に専念していた。

召田輔は閑散としているめだかの家を見渡して「あかねちゃん、御免やで。わいの為にこんな事になってしもて。」と言った。

「召田輔さんのせいじゃないでしょ。」と答えるあかねに、

「マンションの家賃かて払われへんようになるんちゃうかいな。」

「夏の売り上げが残ってるさかい切り詰めたら何とかなるよって、心配せんでええよ。」

「あかねちゃん、わいなんかと一緒になったよってに、こんな事になってしもて・・・。」と言う召田輔の顔を、あかねは睨み、

「そんな泣き言聞きとうないわ。今度、言うたら出て行くよってに。」と怒鳴って、パソコンに向かっていた。

翌日の朝、爺さんを店へ送る傍ら、召田輔は「相談があんねんけど。」と切り出した。

爺さんは、深刻そうな召田輔の顔を見て、「外じゃ、何やから。」と、店の奥へ招き入れた。

爺さんは召田輔に向き合って座り「何や、言うてみい。」と顔を見た。

召田輔は「爺はんの店で働かせて貰えまへんかいな。」と言い出した。

暫く考えていた爺さんは、「それは出来へんな。」と答えて、話を続けた。

「召田輔はんは、めだか屋であかねちゃんを幸せにするって決めて連れて行ったんでっしゃろ。まだ何年も経っとらへんがな。そら、ここは召田輔はんの店やさかい、わしにどうこう言う権利は無いかもしれへん。けどな、わしかってこの店を潰さんように考えて一生懸命やって来たんや。おかげで、ええ目さして貰ろて感謝してまんねんで。せやから余計に召田輔はんにはめだか屋で頑張って欲しいんや。わしは、しがない年寄やし大した金も無いけどな、この店には儲けさして貰ろたし、召田輔はんがめだか屋をやって行く為やったら喜んで援助さして貰いまっせ、せやから、他の事考える暇があるんやったら、めだか屋でやって行けるように、もうちょっと頑張ってみい。今はなあ、召田輔はんがめだか屋で大成すんのが、わしの夢でもあるんやで。」

黙って聞いていた召田輔は「分かった。ちょっと元気出て来た。」と残して、爺さんに見送られて、めだかの家へ戻ったのだった。

(つづく)

 

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