めだか屋で奮闘しまっせ（２０－３）

めだか屋で奮闘しまっせ　（フィクションです）

第二十話　めだかを作りたいの巻（３）

　早速、召田輔（めだすけ）は青年に電話をしていた。「忙しいとこ御免やで、やっぱし、この間のめだか分けて欲しいんやけど。」「持って行きましょうか。」「いいや、他のも見して欲しいさかい行きまっさ。」「日曜の夕方なら大丈夫ですよ。」と言われて、召田輔は横にいたあかねに「日曜の夕方、行ってもええかいな。」と聞くと、パソコンを見ながら「ええよ。」と答えたので「ほんなら、行かせて貰いま。」と元気を取り戻したのだった。

それからはテキパキと作業するようになり、空いた時間でプロジェクトについても、あかねと相談して策も考えて、日曜日が訪れた。

召田輔とあかねは、何時もより早くから作業を始めて、一通りの必要な作業を終えると、あかねは貼り紙をしていた。

貼り紙には（本日、午後お休みします。）と書かれていた。

召田輔がそれを見て「あれ、今日は発送は無いんかいな。」と聞くと、「日にち変えて貰いました。」と、嬉しそうに笑った。

「やっぱしそうでんのか。お客さん来ん内に、早よ行こ。」と戸締りして、軽トラに飛び乗った二人だった。

軽トラは奈良に向かって進んでいて、召田輔が「何や、あかねちゃんの実家へ帰るみたいやな。」と言うと、あかねが「ちゃうよ、えーっと京都府宇治市って書いてあるわ。」と言うので、「エッ。」と少し考えて、「ああ、そうや、変わっとったんや。危なあ、大和郡山へ行ってしまうとこやった。」「引越しの案内葉書持って来て良かった。」「流石やなあ、しっかりしてまんなあ。ほんで、どう行ったらええんやろ。」「道知らへんの。召田輔さん詳しいのとちゃうの。」「そんな訳無いでんがな。取り敢えず、京都の方へ向こたらええんやろ。」「そんなんで、大丈夫かなあ。」と心配そうに召田輔の顔を見ていた。

京都へ近付いたところで、あかねが看板を見て「右、右、宇治って書いてあるやん。何でェ、通り過ぎてしもたやん。」「信号、青やったさかいしゃーおまへんがな。もっと早よ言うてえや。まだ先にも曲がるとこあるやろ。」「また、右、宇治って書いてるよ。」「エーッ、どれかいな。」「また、通り過ぎてしもた。」

二人は、ヤイヤイ言いながら京都南部を彷徨い、迷いに迷って、やっと青年の新居に着いたのだった。

新居は、庭付き一戸建ての可愛い家で、台所続きの広い居間へ迎え入れてくれた。

あかねが居間を拝見しながら、あいの「新婚生活はどう。」の言葉から始まり「うーん、余り変わらへんね。それより、めだかに取り付かれて大変やったんよ。」「へぇー面白そう。何があったの。」とおしゃべりの花を咲かせていた。

その間、召田輔は青年と庭へ行き、お目当てのめだかを見せて貰っていて急にくしゃみが止まらなくなった。「何でかいな。」と首をかしげながら分けて貰った真っ赤な丸いヒラヒラを袋に入れて、あかねに見せに戻ると、あかねが「へェーこれが噂のめだか。綺麗やね。凄いの作らはんのやねェ。召田輔さんの気持ち、分かる気がするわ。」と言って、あかねとあいは向き合ってクスクスと笑った。

召田輔は訳が分からずキョトンとしていた。

その後、「めだかのお礼に、わいがおごりますよって。」と青年とあいを誘い、近くのレストランで夕食としばしの団欒の後、帰路に着いたのだった。

（つづく）

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