めだか屋で奮闘しまっせ (フィクションです)

 

 

第十九話 新しい生活の巻(1) <=以前はこちら

 

第十九話 新しい生活の巻(2) <=以前はこちら

 

第十九話 新しい生活の巻(3) <=前編はこちら

 

第十九話 新しい生活の巻(4)

 

 朝も夜も二人で通い、めだかの家も二人で切り盛りし、少しの休日も二人で過ごす生活だった。

あかねのセンスで選んだ服に着替えた召田輔(めだすけ)は嘘の様に若返って見えて、二人を夫婦と間違われる事もしばしばで「新婚生活ってこんなんやねんな。」と、浮かれていた。

秋も深まって何時ものように一段落着く頃、召田輔はあかねに任せていた経理の確認をして飛び上がった。「こんなに売り上げがあるんかいな。」と言う召田輔に、あかねは「せやね、頑張ったから。けど、養魚場への支払いがこんだけで、あたいの給料がこんだけでしょ。あと、消耗品を買ったり、色々と経費も掛かってるし、召田輔さんの収入はこれくらいね。」「それでも、今迄の倍以上あるがな。ほんまかいな。けど、あかねちゃんの給料少なないでっか。」「爺ちゃんの店の時と一緒にしてるよって、あたいはええの。召田輔さんかて、これを基にして来年に繋げなあかんねんから。」「あかねちゃんはしっかりしてまんなあ。」

収入を聞いて気が大きくなった召田輔は、一人で不動産屋を周っていた。しかし、何処で聞いても安定しない仕事であり、身の上の事を知られると断られるのだった。仕方なく資産家の伯父の所へ向かっていた。

子供の頃から世話になっていても、馬の合わない伯父の家を嫌っていて遠ざかっていた召田輔が訪ねて行くのは何年ぶりかの事であった。

「何や、まだ生きとったんかいな。ちっとも顔出さへんさかい忘れとったわ。あんたにすりゃ、たった一人の親戚や言うのに愛想なしやな。」と、訪ねるなり散々愚痴を言われても、召田輔は頭を下げて聞いていた。

「ほんで、何の用や。」「今のアパートを出て、もっと広い新しい家に移りたいんです。」「勝手にしたらええやないか。」「わいでは貸して貰えんのです。」と聞いた伯父は大笑いして、「ほんで、わしの所へ来たてか。相変わらずやな。」

召田輔は長々と説教されて、それでも、頭を下げて耐え続けた。

やっとの事で口を利いて貰え、めだかの家の近くにある新築マンションの一室を借りたのだった。

翌日、召田輔は「ちょっと行きたい所がありまんねん。」と、あかねを誘ってマンションへ連れて行った。

「わあーっ、広いし綺麗やし。」あかねは踊るように見て回っていた。

「急にどないしたん、此処借りるの。家賃高そうやけど。」と言うあかねの肩を捉まえて、召田輔は「あかねちゃん、一緒に暮らそう。」と言った。

あかねは、プッと吹き出して「プロポーズみたいな事言うて。」と言って、召田輔の顔を見た。

「わいは真面目に言うとんのや。」と言って、あかねを見つめた。

あかねは目を潤ませて「宜しくお願いします。」と答えたのだった。

年が明けてまもなく、「仕事が忙しくなる前にしよう。」と決め、世話になった人達を招待して、ささやかな結婚式を挙げた二人だった。

 

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