めだか屋で奮闘しまっせ（１８－３）

めだか屋で奮闘しまっせ　（フィクションです）

第十八話　二人の女神の巻（３）

　召田輔（めだすけ）がパソコンを持ち帰った翌日、インターネットの工事業者が来ていた。

業者の作業員が「何処へ繋げますか。」と聞くので、「ああ、そこの台の上にあるパソコンに繋げまんのや。」と言うと、作業員は「台の上って、ミカン箱ですがな。こんな箱の上へ置いてパソコン打てまへんで。こっちの方が宜しいんとちゃいますか。」と言って、レジ台の横へパソコンを動かし、モデムを繋げていた。召田輔が、「エエッ、こんなとこでやりまんのかいな。外から丸見えでんがな。」と言ったが、「見えたら困りますのんか。」「まあ、別にええけど。」と了承したので、作業員は繋げるだけ繋げて帰って行った。

召田輔は「どんなもんやろ。」と思い、早速、パソコンの電源を入れてみた。パソコンは立ち上がって初期画面が出たものの、そこから何をどうすれば良いものか皆目分からない。「こりゃ、今度、養魚場の若い子を連れて来て教えて貰わなあかんがな。来週にしよ。」と、パソコンの蓋を閉じてそのままになっていた。

そして、足早に週末になり、あかねがいつもと変わりなく顔を出した。

あかねは、めだかの家へ入って来るなりレジ横のパソコンを見つけ、「ヘェ、パソコン買うたんやね。」と言って、蓋を開けて電源を入れると、「あれっ、設定されてへんやん。」と言って、横に置いてあった資料を見ながら何やらカチャカチャと打ち始めた。

それを見た召田輔はパソコンの横へ行き、あかねの顔をじっと見ていた。

あかねは「何やのジロジロ見て。こないだまで、あたいが近付いたら避けたのに。」と言いながら、カチャカチャしている。召田輔が「あかねちゃん、パソコン出来るんや。」と聞くと、「せやで、営業してた時も総務にいてた時もパソコンで仕事してたさかい。」「そうなんや。」

召田輔は時間が止まってくれれば良いのにと思いながら、あかねの姿を見続けていた。

暫くして、あかねは自分の横顔をじっと見ている召田輔の方へ顔を向けて「出来た。」と囁いた。

召田輔は一時の夢心地から目覚めるように「出来たんかいな。」と呟いた。

あかねは「これがめだかの家用のメール。これが召田輔さんのメール。そして、これがあたいのメール。」と言いながら、カーソルでアイコンを指した。

「フムフム、めだかの家用のが、めだかの家か、そのまんまやけど。わいのは、めだちゃんメールって何じゃいな。それに、あかねちゃんのはピー子のメールかいな。何でやねん。」「別にええやん。ほんでね、このネズミさんで。」と言ってマウスを持ち上げると、「ネ、ネズミっ。」と召田輔が驚いて仰け反った。あかねは笑いながら「これ、ネズミに形が似てるからマウスって言うんよ。これで、此処をカチッとやると、ほら、めだちゃんメールが開いたでしょ。」と言って開いた召田輔用のメールアドレスには、テストメールが一件届いていた。あかねは、メールを閉じて、「それから、ホームページを見る時は、これをカチッってやるの。」と言って、ブラウザーのアイコンをクリックして検索ツールを立ち上げた。「此処へ調べたい言葉を入力すると、ほら、一杯出て来るでしょ。此処から選んで。」と言いながら、大阪のペットショップのホームページを開いて見せた。

「あかねちゃんって、凄いでんなあ。」と驚く召田輔に、「さあ、召田輔さんやって見て。」と交替して、二人は来客にも気付かずに一日中パソコンに向かっていた。

二日間のあかねの特訓のおかげで、少しはパソコンを使える様になった召田輔だった。

「助かったでんなあ。」と喜ぶ召田輔に、あかねは「また一つ、召田輔さんの事分かったわ。」と言った。

召田輔が笑いながら「何でんねん。」と聞くと、「召田輔さんは、鳥だけやのうて、ネズミも嫌いやってこと。」と答えたのだった。

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