めだか屋で奮闘しまっせ（１５－３）

めだか屋で奮闘しまっせ　（フィクションです）

第十五話　恐怖のめだか泥棒の巻（３）

　「ワーッ。」と言う声と共に召田輔（めだすけ）と泥棒が床に倒れ込んだのを見て、あかねが照明を付けた。召田輔は泥棒の顔を見るなり「爺はんやないか。」と叫んだ。

爺さんは「あー、びっくりしたあ。死ぬかと思たがな。」と言いつつ寝転んでいる。召田輔が「泥棒は爺はんやったんかいな。」と起き上がると、「何言うとんねん、わしが泥棒する訳無いやろが。トイレの窓から温室の方を見たら灯りがチラチラしとるよって泥棒でも入っとんのんちゃうかと思て見に来たんやがな。イテテテッ、腰打ってしもたがな。そっちこそ、何でこんなとこでイチャイチャしとんねん。」「ちゃいまんがな、めだか泥棒捕まえようと思て見張ってまんねん。」「そうでっか、えらい楽しそうで宜しおまんな。わしも邪魔させて貰いまっせ。」「何や、帰れへんのかいな。」と、思わぬ事で爺さんまで加わって三人で見張りをすることになってしまったのだった。

召田輔とあかねは、仕方なく爺さんにベンチと毛布を譲って、二人はもたれ合って座り、見張りを続けた。

十分も経たないうちに爺さんは大いびきを上げて寝始めた。

召田輔が「もーう、これやから帰れって言うたのに。」と嘆くと、あかねは「しゃーないやん。」と、ふてくされた様子で言う。「こんなんやったら泥棒も入って来やへんがな。」「しゃーないやん。」召田輔はブツブツ言いたい気持ちを必死で抑えて見張りを続けていた。

すると、奥の方から飛び出して来た黒い物体を目撃した。

「何やあれは。」慌てて懐中電灯を付けようとしたが、スイッチを何度も入り切りしても付かない、「肝心な時に。」と振り回していると、あかねが「あっ、あそこちゃう。」と言って、立ち上がって走って行った。「あかねちゃん、何処行った。」と召田輔は目を凝らしながら付いて行こうとしたが、暗闇で良く見えない。「キャー。」と、あかねの悲鳴が聞こえた後、バタバタと何者かが召田輔の足元を掠めて通った。「ワァー、何かおるがな。」と飛び跳ねると、また、バタバタと走り抜ける音がする。「こいつやな。」と探ろうとするが良く見えない。召田輔が追いかけた勢いで、その物体は棚上へ飛び上がり、召田輔は柱に引っかかって何かに倒れかかった。その拍子に、あかねの「キャー。」と言う悲鳴と共に、ザブンと水の音がした。「あかねちゃん、大丈夫かいな。」「イヤーん、濡れてしもたやん。」と騒いでいると、また、黒い物体が召田輔に襲い掛かってきた。

「ワーッ、助けてくれ。」と叫んでいる召田輔。

バタンと音がして、「イタタタッ、何や真っ暗で何も見えへんがな。」と叫んでいる爺さん。

「何か襲って来よるんや、ワーッ。」、召田輔が一人でドタバタと何かと闘っている時、パッと照明が付いて、二つの黒い影がバタバタと奥の方へ走っていった。

あかねは、びしょ濡れで照明スイッチの横に立ち、召田輔と爺さんは床に座り込んでいた。

そこへ、ピーピーピーピーと鳴きながら緑の小鳥が飛んできて、召田輔の頭に止まった。

それを見て、あかねがくすくすと笑っていた。

暫くして、逃げて行った黒いものを目撃したあかねが、タオルで頭を拭きながら「あそこらへんへ逃げていった。」と指差すあたりを、正気に戻った召田輔は探していた。棚を動かし、水槽を動かしして見てみたが、「おかしいなあ、何処にもおらへんがな。」と不思議そうに言う召田輔に、あかねは「猫くらいの大きさがあったし、それに、二匹以上おったし。」と、辺りを探している。爺さんが「どっかに穴開いとるんちゃうか。」と覗き込んで見ていて、棚の奥の角に足を乗せると床板が少し下がって壁との間に隙間が出来た。「これちゃうか。」と爺さんに言われ、召田輔が強く踏むと５センチ程度の隙間になった。

「何や知らんけど、こっから入って来とったみたいやな。」と言って、爺さんはベンチへ戻って寝ていた。

翌日、召田輔は、角に板を当てて床が下がらないように固定した。

それからは、めだかが居なくなることは無くなったのだった。

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