昭和を輝かせた先人
先日、喫茶店のピトンで昼食をとりました。
ピトンは、新聞、月刊誌が、多く置かれているのですが、そこに、「鮮やかに生きた昭和の100人」がありました。
昭和は、激動の時代でした。
激動の荒波を逞しく生きた先人の写真、そして、エピソードは、面白い。
世界恐慌、軍国主義、第二次世界大戦、敗戦、高度経済成長、バブルの始まりと、こんなにも、浮き沈みの激しい昭和。
紹介された100人は、時代に翻弄されながらも、実は、時代の波に乗った方々です。
紹介された方の中で、作家 川端康成のエピソードに感心しました。(敬称略)
ノーベル文学賞を受賞した川端康成の作家の評価はここで記す必要はありません。
川端は、堀辰雄、坂口安吾などの葬儀の際、弔辞を送ったとのこと。その弔辞は、格調高く、時には、亡くなられた作家の文体になることもあり、文学作品でもあったとのこと。
その川端が、絶賛した文章が紹介されていました。
それは、昭和四十三年、二十七歳という若さで自死を選んだ円谷幸吉(東京オリンピックマラソン銅メダリスト)の遺書です。
父上様、 母上様、
三日とろろ美味しゅうございました。
干し柿、もちも美味しゅうございました。
敏雄兄、姉上様、
おすし美味しゅうございました。
克美兄、姉上様、
ブドウ酒、リンゴ美味しゅうございました。
巌兄、姉上様、
しそめし、南ばんづけ美味しゅうございました。
喜久造兄、姉上様、
ブドウ液、養命酒、美味しゅうございました。
又いつも洗濯ありがとうございました。
幸造兄、姉上様、
往復車に便乗させて頂き有難うございました。
正男兄、姉上様
お気をわずらわして大変申し訳ありませんでした。
幸雄君、英雄君、幹雄君、敏子ちゃん、ひで子ちゃん、良介君、敬久君、みよ子ちゃん、ゆき江ちゃん、光江ちゃん、彰君、芳幸君、恵子ちゃん、幸栄君、裕ちゃん、キーちゃん、正嗣君、
立派な人になってください。
父上様、母上様、
幸吉はもうすっかり疲れ切って走れません。
なにとぞお許し下さい。
気が休まる事もなく、
御苦労、御心配をお掛け致し申し訳ありません。
幸吉は父母上様のそばで暮しとうございました。
円谷幸吉の遺書に接したとき、川端は「おのれの文章をかへりみ、恥ぢ、悼む」「ここに文章の真実と可能性を見えたことはまことであった」と絶賛して追悼したとのこと。
私たちに、円谷の遺書に心を揺さぶられる感性があるのか。
昭和を彩った先人の輝きに、平成を生きる私たちは、平成の世を輝かせることができるのだろうか。
まずは、昭和を生きた父母、先輩方に教えをこおう。
花咲宏基拝