妄想、BL(O×N)のお話です。
BLの意味が分かる方、妄想とご理解いただける方のみお進みください









《side  O》

夜、ベッドに入るとカズも当たり前のようにベッドに潜り込んできて俺の胸元でころんと横になる。

「かず・・・おかえり、かず・・・」

あの日から俺の心は凍ってしまって涙も出なかったんだけど、隣に寄り添ってくれる温もりに心がだんだん溶かされて・・・初めて俺は涙を流せた。
やっと、悲しいって感情が湧いてきて。
カズを抱きしめて号泣していた。
カズはそんな俺の顔をぺろぺろ舐めてくれて、その日から俺の日常には少しずつ色が戻ってきた。

何歳かも分からないし何か病気があると大変だから、週末に獣医に連れて行くと年齢はおそらく3歳くらい、なんの病気もなく健康そのものだと言われて安心し、混合ワクチンだけ打ってもらって帰宅した。

朝、カズが顔をぺろぺろ舐めて起こしてくれて、一緒に朝ごはんを食べる。
出勤の時は玄関までついてきて鼻ちゅーをして見送ってくれる。
帰ると玄関で飛びついて出迎えてくれて、一緒に夕飯。
たまに一緒にお風呂に入って、一緒に眠る。
休日には一緒に映画を見たり、ケージに入れて一緒に出かけたりする。

猫は家に居たがるものだと思ってたけど、カズはいつでも俺と一緒にいたいようで、スーパーに買い物に行こうとするだけで自らケージに入って「連れてけ」と訴えかけてくる。
カズと過ごす毎日は楽しくて、カズが来てから俺はどんどん健康を取り戻し、元の生活を取り戻していった。

だけど、時々・・・戻ってきてくれただけでも充分なのに・・・少し高い綺麗なかずの声をまた聞きたい、なんて思ってしまうんだ。
人の欲には際限がない。

「お前が喋れたらいいのにな」

ある日の夕飯の時、ビールを飲みながらそんなことをカズにぽろっと溢してしまった。

その夜。
いつものようにカズを抱きしめながら眠りに就いていた。

夜中に「さと・・・」ってかずの声が聞こえた気がして、夢だと思いながら目を開けると、俺の腕の中に人間の、しかも裸のかずがいて・・・目の前にかずの可愛い顔・・・。
その日は新月でいつもより暗いのに、かずの白い肌や琥珀色の目はまるで光ってるようにはっきりと見えた。

「かず・・・かず!!会いたかった・・・。
これ、夢?」

「んふふ。夢じゃないよ?」

絶対夢だと思うのに、かずのすべすべの肌も、耳をくすぐる笑い声もやたらリアルで。
夢なら醒める前に、と無我夢中でかずを抱きしめ、泣きながらその唇の、肌の感触を確かめた。