妄想、BL(S×N)のお話です。BLの意味が分かる方、妄想とご理解いただける方のみお進みください。











《side  N》

「おめでとう」

そう言って魔法使いが現れたのはショウさんに金魚だとバレた次の日。
会社に行くショウさんを見送ってちょっとしてからだった。

「何がおめでとうなんですか?
金魚だってバレて・・・もう絶対気味悪がられてるし、きっと捨てられるのに・・・」

朝、ご飯をくれた時のショウさんはいつもと変わらず、いやいつもよりにこにこしてたかな?
気味悪いと思ってる感じはなかったけど、怖いから「祟られないように手放すまでちゃんとお世話しなきゃ」って思ってるかもしれない。
それなのに「おめでとう」なんて言われて声が尖る。

「そっか、お前には分かんないんだもんね。
彼、金魚のままのお前も好きだって思ってるよ」

「え・・・嘘・・・。そんなことあるはずない。
揶揄うのはやめてください!」

「まぁ信じる信じないはお前次第だけど。
俺はゲームに負けたから報酬としてお前を人間にしてやろうって来たの。
信じられないならそのまま金魚でいる?」

ほんとに・・・?ほんとにこれからずっと人間のままショウさんの隣にいられるの?
そんな夢みたいなことが起こるなんて。

「いえ!人間にしてください!」

魔法使いの気が変わらないうちに慌ててお願いする。

「よし。
ただし、あいつの記憶からお前のことは綺麗さっぱり消えるから」

「え、何ですか、それ!話が違う」

「人間にしてやるとは言ったけど記憶そのままとは言ってないだろ。
精々頑張れ」

そんな、と食ってかかろうとしたところで魔法使いが指を一振りし、いつもと桁違いの熱さ、痛みが体を襲う。
長く続く苦痛にだんだん意識が朦朧とし、やがて闇に飲み込まれた。

⭐︎⭐︎

ふっと目を覚ますと見慣れたショウさんちの天井。
時間を確認したらあれから2時間くらい経っていた。

これから人間として生きていくのか・・・。
てか、ショウさんから僕の記憶がなくなってる、ってことはこのままここにいたらただの不審者じゃん。

クローゼットからショウさんの服を借り、ふと思い付いて仕事机の引き出しからショウさんの名刺を1枚取って部屋を出た。