智くんサイドはこちらから☺️


妄想、BL(O×N)のお話です。BLの意味が分かる方、妄想とご理解いただける方のみお進みください。






《side  N》


住所と大伯母の名前だけが書かれた紙と、片道の交通費を渡され、新幹線と在来線を乗り継いで5時間。
さらに駅からバスで30分ほど走り、バス停から上り坂を登ること20分。
こんなとこ不便なとこに住む人いるのか、と思ったけど途中にはちらほら民家が見える。

例によって雨が降ってるし、夕方になり多少ましになったとはいえ蒸し暑くて、死ぬかも、と思いながら坂道を登っていると、少し先の道端に1人の男性が立っているのに気がついた。

この雨の中、傘もささずに浴衣に下駄で佇んでいる。
何してるんだろう・・・。
でも地元の人なんだったら挨拶した方がいいんだろうか。

徐々に近付いてくるにつれ、その人の顔も見えてくる。
毎日外にいるのか、日焼けした肌に田舎には珍しい金髪。
歩いてくる僕を見る顔は丸顔で、鼻筋がすっと通り、深く澄んだ目が印象的だ。

軽く会釈し、「こんにちは」と言って通り過ぎようとしたら、

「和也!俺が見えるのか!」

ってふにゃーっと満面の笑みを浮かべて嬉しそうに叫んだ。

あれ?俺の名前知ってる・・・。
もしかして知り合い?
記憶を探るためじっと見つめてみても全然思い出せない。
大伯母さんのご近所さんでいろいろ聞いてるとか?

「辛かったな。」

そう言って荷物を持ってくれたその手は筋張って指が長くて綺麗で、少しドキドキした。
智さん、という名前を聞くとどこか懐かしい感じがして、胸の奥がきゅっとした。

一緒に大伯母さんちに歩く。
玄関まで一緒に来たはずなのに、いつの間にか智さんの姿は見えなくなってしまっていた。
いつ帰っちゃったんだろう。

でも並んで歩いていた時の体の右側がなんとなく暖かくて・・・非現実的だけど、智さんがいるような気がした。