仕事を辞める決断


やっとの思いで復職にこぎつけたのですが、現実はそうあまくありませんでした。



きっかけはやっぱり、認知症のある患者さんでした。



その患者さんに、後輩が点滴をしていた時のことです。



私は、すぐ隣りの患者さんの処置をしていました。



認知症のある患者さんは、点滴が一回で入らなかったことにイライラした様子で、



「オイ、お前何回刺すつもりだ!一回でできないなら点滴なんかしにくるな!先輩を呼んでこい!」



と、突然大声で怒鳴り出しました



後輩は、なんとか再度点滴をさせてもらえるように、お願いしていましたが、患者のイライラは増す一方で、怒鳴り声が続きます。



「お前にはさせないって言ってるだろう!俺は新人の練習台じゃない!先輩を呼んでこい!」



もちろん、後輩は新人看護師ではありません。



その怒鳴り声を聞いて、私は身体が固まってしまいました。そして過去の嫌な思いをしたことが、フラッシュバックしました。



復職を急ぎ過ぎたのかもしてないとか、後から色々と考えてはみたのですが、そこまでひどい認知症患者ではなかった今回の場合でも、怒鳴り声を聞いて動けなくなったことを考えると、もうこの仕事を続けるのは難しいのではないかと思いました。



それでも、今回一回だけのことで退職を決めるのは早すぎると思われる方もいるかもしれません。



私も、復職後初めてのことだったので、我慢していればそのうち以前のように慣れてくるのではないかとも思いました。



ですが、もう以前のように我慢する私ではなくなっていました。『自分の居場所はもうここではない』という考え方ができるようになっていました。



仕事をしていく上で、どの職種においてもストレスが生じることは理解しています。ですが、以前の私のように、



『我慢をして慣れるまで待つ』



ことは、自分の心身に負担が大きいことを知ってしまった以上、無理はできない、したくないと考えるようのなっていました。



正直、退職を決断することは簡単なことではありませんでした。



多少の貯蓄があったとしても、収入がなくなることを意味するのですから、不安がないわけではありません。



また、一度社会から離れたら、復帰するまでが大変であることを経験していましたし、年齢的にも再就職が難しいこともわかっていました。



それでも、やっぱり認知症患者の対応はもう無理だと自分の中で整理がついていたので、数日後の10月末、年内での退職の意思を申し出ました。




 TODAY'S
 
メッセージ


今回紹介した認知症患者の話ですが、以前の私だったら、間違いなく我慢していたと思います。それどころか、『自分自身も早く慣れなくてはいけない』と思い、後輩に点滴の交代を申し出ていたかもしれません。


以前の私はそんな性格をしていたのです。


ですが、うつ病を発症し自分でも気づかないうちに、自身の心身にストレスを与えていたことに気づいたことで、そういう自分の性格を変えようと思えました。


自分の性格を変えるなんてことは簡単にできるはずないと思いますか?


それも、自分の気持ちの持ちようだと、私は考えています。


認知症患者の対してPTSDのような反応を示している私ですが、それはそれで私の性格の一部として、今後も向き合っていきたいと思います。




次回は、退職を決断してからの仕事への向き合い方について書きたいと思います。