吉川英治さんの歌です

　あめつちの中にわれありひとりあり

　この歌には、おごりはありません。

　天地の中のちっぽけな私が、自分一人の力で生きているのではなくて、動物から、植物から、ありとあらゆるものに支えられて生きさせていただいていたのだという、生きていることの驚きと、自分が生きるとということはどういうことであるかという確認の中から出た句であります。

　吉川英治さんはきわめて逆境に育ったお方です。それでも、非行に走らずに済んだのは、縁日の夜店でボロボロになった松尾芭蕉の句集を買って読んだからだ、という話をうかがったことがあります。

　山本有三さんの「路傍の石」で、非行になりかかった伍一少年を先生が慰める言葉があります。

　「たったひとりしかない自分を、たった一度しかない一生を、ほんとうに生かさなかったら、人間、生まれてきた甲斐がないじゃないか」

　一人しかいない自分をどう見たらいいのだろうかということを、一緒に考えてみたいと思います。

善き日々をお祈りいたします。

※　画像は昨年の東京町田薬師池公園での「アオサギ」です。

　　じっと何を考えているのでしょうか。