New Blood - No. 52 : ビーストミルク/ Beastmilk
New crush : ヘルシンキ発Beastmilk (
@beastmil
) ビーストミルク。
ビーストミルクはKvohst(ボーカル)、Goatspeed(ギター)、Arino (ベース)、 Paile (ドラム)からなる4人組のポストパンク・バンド。
バンドはプレスリリースでジョイ・ディヴィジョン、エコー&ザ・バニーメン、キリング・ジョーク、ピーター・マーフィー(ex Bauhaus)を先鋭化せしめたエレメントを持っているとし自らの音楽性を「ポストパンク黙示録」と銘打っている。
背後からの光で黒尽くめでもなお陰影がついたメンバーはもはや影と一体化し、Kvohstはグラスから溢れ出ているのにもかまわず変敗したミルクを注いでいる。
腐敗した感情のオーバーフローをミルクは実体化しているかのようだ。
このミルクと同様に世知辛い世の中に対してのブラックユーモアな感覚と終末論的なビジョンを持ち人間の絶望的な状況を煌びやかにビーストミルクは具現化する。
2013年10月19日、ロンドンのThe Garageで開催された” live evil festival”でVampire, Eliminator, Necrowretch, Pentagram Chile,
bastardhammer等と共に出演したビーストミルクに初見で私は虜になった。
リズムセクションはタイトな低音重戦車、ギターの歪み不協和音は破壊的で煌びやか、AメロはずっとAm/ Em一発でサビは叙情的なコード進行になり曖昧な旋律から驚異的に美しい旋律へという具合に感情的にフックしてくる演奏にしびれた。
ザ・キュアー、ミスフィッツ、デッド・ケネディーズまでもブレンドしたと声明を出している通りに膨大な遺産を「ポストパンク黙示録」に落とし込んでいる。
従来のホラー・パンクと比較してビーストミルクが鳴らすサウンドは圧倒的に美しく多彩だ。
しかしその実、歌われる内容は邪悪で、サイコパスが大量虐殺をし終えた夜を想起させハッと我に返りゾッとし嫌悪感が沸々と湧いてくる。
“
Void Mother”は、ミスフィッツ (The Misfits) サウンドを呼び起こし、ずしりとした低音リバーブレーションが降り注ぎノイジーなギターのハンマーリフは殺人的。エフェクトの掛かり方バランス及び音質が絶妙なプロダクションになっている。
そして詩情は、キリスト教系新宗教の人民寺院での集団自殺により母を失ってしまったかのような情景が浮かぶ。
“
Children of the Atom
Bomb”、このポストパンクチューンの詞は・・・・、欧米人にはジョージ・A・ロメロの世界なのだろうか。
不条理演劇が生まれた背景には実存主義思想と第二次世界大戦でヨーロッパが受けた衝撃と荒廃があるといわれるが、人間の業が生んだ史上最も卑劣な蛮行に対して、この曲に逆説的な批判の意が込められていると解釈してみるにせよ、アートをアートとして見られない感情が湧き上がってくるというのが正直なところだ。
“
Forever Animal” 、デッド・ケネディーズスタイルとホラーズを彷彿とさせるキャッチーなフックを持つダークポップチューン。
“ Red Majesty” エクスペリメンタルな素晴らしいトラック。私の一番のお気に入り。トライバルで重低音なドラミングはキリング・ジョークだ。全ての構成に加えサウンドプロダクションが秀逸。詞の内容はソ連崩壊について。
さて、このようにクオリティの高い:ポストパンク・バンドが突如としていかにして現れたのか?
実は、バンドのカリスマ的フロントマンKvohstことマシュー・マックナーニ(Mathew McNerney)は、英国ブラックメタルバンド、コード(Code)やノルウェーの前衛的アヴァンギャルド・ブラックメタルバンド、ドッドハイムズガード(Dodheimsgard)で活動していたバックグラウンドを持ち、2009に結成されたサイケデリック・ネオ・フォークバンドHexvesselのフロントマンとしても活動しているアーティストなのだ。
いわばアンダーグラウンドなアティチュードのダウンサイジングである。これでも・・・・・・。
バンドは地元フィンランドのレコードレーベル “Svart Records”より2013年11月29日にフルレングスのデビューアルバムをCD / LP /デジタル•フォーマットでリリースする。期待して待ちたい。
キリング・ジョーク(Killing Joke) / サザン・デス・カルト(Southern Death Cult) / シアター・オブ・ヘイト(Theatre of Hate) /バウハウス(Bauhaus)
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