First Impression : Suede - Bloodsports
スウェードが戻ってきた。
5thアルバム「ニュー・モーニング (A New Morning)」からじつに11年ぶりであるスウェード通算6枚目のオリジナル・アルバム「ブラッドスポーツ (Britpop)」がついにリリースされた。
初期の3作のアルバムを手がけたプロデューサーのエド・ビューラー(Ed Bulle)を迎え「ブラッドスポーツ」は1996年に時計の針を戻してるかのようだ。3rdアルバム 「カミング・アップ (Coming Up)」でスウェード史上初のプラチナレコードを獲得した年が1996年である。
ザ・スミス (The Smiths) のモリッシー(Morrissey)とジョニー・マー(Johnny Marr)の関係に例えられたスウェードのブレット・アンダーソン(Brett Anderson)とバーナード・バトラー(Bernard Butler)。そのバーナードが1994年にスウェードを脱退。バンドは失速し終わるだろうという大方の見方の中で放った起死回生の大ヒット作が3rdアルバム 「カミング・アップ」だった。
本作M02 「スノーブラインド (Snowblind)」と M06 「ヒット・ミー"(Hit Me)」のスリリグなポップダイナミズムは3rdアルバムからの1stシングル 「トラッシュ (Trash)」と2ndシングル「ビューティフル・ワンズ(Beautiful Ones)」の直線上にある曲。
広々とした音場感と70'sレトロなサウンドのM01「バリアーズ(Barriers)」で幕が上がり、やおらスウェードが蘇ったことを実感しオープニングから心躍る。メロドラマタッチのミドルボイス/ヘッドボイスで歌われるブレットの歌唱も1996年と変わりなく健在だ。
エド・ビューラーによるサウンド・プロダクションであろう音質は、キックドラムが過去と比べてラウドになっていることが顕著だが、ギター·トーンも拡声するボーカルのリバーブ量も以前の彼らのものだ。言い換えればモダンなタッチはない。
M03「イット・スターツ・アンド・エンズ・ウィズ・ユー(It Starts And Ends With You)」。プレコーラス(pre-chorus)、コラース、ポストコラース(post-chorus)から成り2番目のコラース後のギターソロとキーチェンジがブリッジ(Bメロ)の役目をしいて少しモノトーンな印象を与えアルバムの流れとして適切だと思われる。
M04「サボタージュ(Sabotage)」とM05「フォー・ザ・ストレンジャーズ(For the Strangers)」。簡単な構成の曲だがここでも初期3作のサウンドを復活させ、とりわけ1994年リリースの2ndアルバム「ドッグ・マン・スター (Dog Man Star)」のスウェードのスタンダードが鳴り響く。また「サボタージュ」は「ドッグ・マン・スター」期以来のブレットの最高の部類の歌詞ではないか。それはゆがめられた世界からの抒情詩。
アルバムの後半は歪んだギターを裸にしてクリーンな音に置き換えている。M07「サムタイムズ・アイ・フィール・アイル・フロート・アウェイ(What Are You Not Telling Me)」はワブル・キーボード(ぐらぐらする音)の中でスタッカートとレガートがあいまった美しい曲。本作のハイライト。
M08「ホワット・アー・ユー・ノット・テリング・ミー?(What Are You Not Telling Me?)」。1stアルバムのリリース前にリリースされていた2ndシング曲「メタル・ミッキー(Metal Mickey)」のビーサイド(B-SIDE)「ホエア・ザ・ピッグス・ドント・フライ(Where the Pigs Don't fly)」を彷彿させるリズムと間奏をもつこの曲だが、サウンド・プロダクションは2009年リリースのブレット・アンダーソンのサード・ソロ・アルバム「スロウ・アタック(Slow Attack)」のようだ。澄みきって荘厳なるサウンドスケープ。ブレットのソロに親しんでいなかったリスナーにはやや誇張して聴こえるかもしれない。しかし冗長になることなく危険な歌詞とサウンドが強烈な余韻を残す。
また、キャッチーなフックに依存して新たなファンベースを広げようとするのではなくロイヤリティが高いブレット・アンダーソンのファンをも満足させ得る詩的世界と耽美な世界がいかんなく繰り広げられダークサイドの欲望を昇華させるようなアルバムになっている。
"集金"再結成バンドでなかったことの奇特さだけではなく、スウェードの世界観が澄み渡り、スウェードの真摯なミュージシャンシップを本作は証明した。
01. バリアーズ (Barriers)
02. スノーブラインド (Snowblind)
03. イット・スターツ・アンド・エンズ・ウィズ・ユー (It Starts And Ends With You)
04. サボタージュ(Sabotage)
05. フォー・ザ・ストレンジャーズ (For The Strangers)
06. ヒット・ミー (Hit Me)
07. サムタイムズ・アイ・フィール・アイル・フロート・アウェイ (Sometimes I Feel I’ll Float Away)
08. ホワット・アー・ユー・ノット・テリング・ミー? (What Are You Not Telling Me?)
09. オールウェイズ (Always)10. フォルトライン (Faultlines)
スウェードが戻ってきた。
5thアルバム「ニュー・モーニング (A New Morning)」からじつに11年ぶりであるスウェード通算6枚目のオリジナル・アルバム「ブラッドスポーツ (Britpop)」がついにリリースされた。
初期の3作のアルバムを手がけたプロデューサーのエド・ビューラー(Ed Bulle)を迎え「ブラッドスポーツ」は1996年に時計の針を戻してるかのようだ。3rdアルバム 「カミング・アップ (Coming Up)」でスウェード史上初のプラチナレコードを獲得した年が1996年である。
ザ・スミス (The Smiths) のモリッシー(Morrissey)とジョニー・マー(Johnny Marr)の関係に例えられたスウェードのブレット・アンダーソン(Brett Anderson)とバーナード・バトラー(Bernard Butler)。そのバーナードが1994年にスウェードを脱退。バンドは失速し終わるだろうという大方の見方の中で放った起死回生の大ヒット作が3rdアルバム 「カミング・アップ」だった。
本作M02 「スノーブラインド (Snowblind)」と M06 「ヒット・ミー"(Hit Me)」のスリリグなポップダイナミズムは3rdアルバムからの1stシングル 「トラッシュ (Trash)」と2ndシングル「ビューティフル・ワンズ(Beautiful Ones)」の直線上にある曲。
広々とした音場感と70'sレトロなサウンドのM01「バリアーズ(Barriers)」で幕が上がり、やおらスウェードが蘇ったことを実感しオープニングから心躍る。メロドラマタッチのミドルボイス/ヘッドボイスで歌われるブレットの歌唱も1996年と変わりなく健在だ。
エド・ビューラーによるサウンド・プロダクションであろう音質は、キックドラムが過去と比べてラウドになっていることが顕著だが、ギター·トーンも拡声するボーカルのリバーブ量も以前の彼らのものだ。言い換えればモダンなタッチはない。
M03「イット・スターツ・アンド・エンズ・ウィズ・ユー(It Starts And Ends With You)」。プレコーラス(pre-chorus)、コラース、ポストコラース(post-chorus)から成り2番目のコラース後のギターソロとキーチェンジがブリッジ(Bメロ)の役目をしいて少しモノトーンな印象を与えアルバムの流れとして適切だと思われる。
M04「サボタージュ(Sabotage)」とM05「フォー・ザ・ストレンジャーズ(For the Strangers)」。簡単な構成の曲だがここでも初期3作のサウンドを復活させ、とりわけ1994年リリースの2ndアルバム「ドッグ・マン・スター (Dog Man Star)」のスウェードのスタンダードが鳴り響く。また「サボタージュ」は「ドッグ・マン・スター」期以来のブレットの最高の部類の歌詞ではないか。それはゆがめられた世界からの抒情詩。
アルバムの後半は歪んだギターを裸にしてクリーンな音に置き換えている。M07「サムタイムズ・アイ・フィール・アイル・フロート・アウェイ(What Are You Not Telling Me)」はワブル・キーボード(ぐらぐらする音)の中でスタッカートとレガートがあいまった美しい曲。本作のハイライト。
M08「ホワット・アー・ユー・ノット・テリング・ミー?(What Are You Not Telling Me?)」。1stアルバムのリリース前にリリースされていた2ndシング曲「メタル・ミッキー(Metal Mickey)」のビーサイド(B-SIDE)「ホエア・ザ・ピッグス・ドント・フライ(Where the Pigs Don't fly)」を彷彿させるリズムと間奏をもつこの曲だが、サウンド・プロダクションは2009年リリースのブレット・アンダーソンのサード・ソロ・アルバム「スロウ・アタック(Slow Attack)」のようだ。澄みきって荘厳なるサウンドスケープ。ブレットのソロに親しんでいなかったリスナーにはやや誇張して聴こえるかもしれない。しかし冗長になることなく危険な歌詞とサウンドが強烈な余韻を残す。
M09「オールウェイズ(Always)」。琴の音色で始まる非常にメロディックでエモーショナルな曲だが、和音の構造、ギターのアルペジオとベースラインはピンク・フロイド(Pink Floyd)の「ヘイ·ユー(Hey You)」のように聴こえる。休符が効いてセカンド・ヴァースからのダイナミクスに息を呑む。
アルバムの幕を閉じるM10「フォルトライン(Faultlines)」は、前述の「スロウ・アタック」のサウンドスケープだがコード進行とボーカルのメロディはブレットのソロ2作目「ウィルダネス(Wilderness)」のM03「クラウンズ(Clowns)」のようだ。いずれにせよ心酔してしまえばこの曲から戻れないのではと思えるぐらいエピックな曲。
アルバムの幕を閉じるM10「フォルトライン(Faultlines)」は、前述の「スロウ・アタック」のサウンドスケープだがコード進行とボーカルのメロディはブレットのソロ2作目「ウィルダネス(Wilderness)」のM03「クラウンズ(Clowns)」のようだ。いずれにせよ心酔してしまえばこの曲から戻れないのではと思えるぐらいエピックな曲。
本作でスウェードはスウェード・ファンにスウェードらしさを提供した。
また、キャッチーなフックに依存して新たなファンベースを広げようとするのではなくロイヤリティが高いブレット・アンダーソンのファンをも満足させ得る詩的世界と耽美な世界がいかんなく繰り広げられダークサイドの欲望を昇華させるようなアルバムになっている。
"集金"再結成バンドでなかったことの奇特さだけではなく、スウェードの世界観が澄み渡り、スウェードの真摯なミュージシャンシップを本作は証明した。
01. バリアーズ (Barriers)
02. スノーブラインド (Snowblind)
03. イット・スターツ・アンド・エンズ・ウィズ・ユー (It Starts And Ends With You)
04. サボタージュ(Sabotage)
05. フォー・ザ・ストレンジャーズ (For The Strangers)
06. ヒット・ミー (Hit Me)
07. サムタイムズ・アイ・フィール・アイル・フロート・アウェイ (Sometimes I Feel I’ll Float Away)
08. ホワット・アー・ユー・ノット・テリング・ミー? (What Are You Not Telling Me?)
09. オールウェイズ (Always)10. フォルトライン (Faultlines)
埃や劣化のない11年ぶりのカムバックレコードの耽美世界に畏敬
Author rating: 8/10