夜更けに食べた娘の手料理

 

「今夜、ちょっと帰宅が遅くなるけど、起きててね。パパに食べさせたいものがあるから」

 

ハイボールを飲むと、すぐに眠くなる。

だが、娘に「起きてて」と言われれば、待つしかない。

何を食べさせてくれるのだろうか。

眠い目をこすりながら、娘の帰宅を待った。

 

夜11時すぎ、台所からバターが焼ける香りが漂ってきた。いつもならば、酔っ払って横になっている時間だが、娘の手料理が食べられるのならば、話は別だ。

 

「お待たせ〜。この味、パパ絶対気に入ってくれると思うよ」

 

テーブルに運ばれてきたのはパイだった。そういえば、アップルパイは娘の得意料理。

「こんな夜更けにスイーツかよ!」と思ったら、大間違いだった。

 

惣菜パイ。

パイ生地の中には、ポテトサラダと厚切りベーコンが入っていた。

 

熱々でサクサク。食べ応えもじゅうぶん。

「めちゃくちゃうまい。いつでも、カフェをオープンできそうだね」

 

21年間、親子一緒に食卓を囲んでいるから、味の好みが分かるのだろう。

娘の予想通り、パパには、ど真ん中のストライクだった。