感謝の牛タン

 

「母の日」の12日、大量の牛タンを買いに、車で郊外の大型スーパーに出かけた。

帰宅し、夕食の準備をしていると、娘がニコニコしながら近づいてきた。

僕が外出している際、娘の彼氏、ねすたがこんなことを言ったそうだ。

 

「きょうは『母の日』だよね。お母さんにお祈りをしようよ」

 

妻が他界して今夏で16年。きっと、多くの人から「いつまで、引きずってんだよ」と思われていることだろう。だが、娘の彼氏のように、わが家を訪れ、あるいは、縁のある場所で、僕たち家族と一緒に妻を偲んでくれる人がいる。これほど、うれしいことはない。涙も出るが、元気も出る。やっぱり、死ぬまで引きずっていこうと思った。

 

幸せ気分に浸った2024年の「母の日」。その夜、ねすたには、感謝の気持ちを込めて、肉厚の牛タンを腹一杯食べさせた。