六本松さくら
亡き妻は、ある女性の生き方に影響を受けていた。その女性とは、乳がん患者だったジャーナリストの千葉敦子さん。千葉さんは亡くなる直前まで、自身の闘病の記録を実名で新聞や週刊誌などに寄稿した。実名で綴られた記事は衝撃的で説得力があった。
妻の闘病記は、僕がまとめた。妻はブログで「六本松さくら」というハンドルネームを使い、本名を名乗ることをためらっていた。そのため、僕は原稿執筆中、実名の扱いをどうするか迷った。妻が千葉さんに憧れていたことをブログで知り、最終的には、家族の名前を公表した。
妻がブログで書いているように、実名公表が患者とその家族にどのような影響を与えるかは「蓋を開けなきゃ、わからない」。考え方は人それぞれ。家族の数だけ答えがある。だが、わが家の場合、実名を公表したからこそ、多くの出会いと気づきがあったことも事実。僕と娘は、この世に存在する意味を知ることができた。
出会った子どもたちの手紙を読み返しながら思う。
あのときの判断は間違いではなかった、と。
リアルな話だからこそ、伝わることもある。
どうして本名で書けないのか?(2007年9月6日)
どうして堂々と本名でブログが書けないのか?
これは、がんになった7年前から思っていることで、
今後も私の永遠のテーマになるだろうと思っている。
ブログ村に登録しているので、毎日、数多くの闘病記を目にしている。
いつか、ブロガーの皆さんにも聞いてみたいな。
本名を出していらっしゃる方は、ほんの一握りだ。
芸能人や著名人の中には、がんのことを堂々と公表し、その後、がん治療やがん予防の啓蒙活動に入っている人も多い。
「乳がんなんかに敗けられない」
「よく死ぬことは、よく生きることだ」
「死への準備」
など、乳がんになって一番最初に読んだ本は、
ジャーナリスト千葉敦子さんの本だった。
彼女の生き方は、ストイックで、自立していて、読んでいて勇気づけられたが、最後の死に方は壮絶だった。
「いつか、千葉敦子さんのような文章を書いてみたい」
闘病記のブログを書き始めたのは、そんな想いを7年前から温めていたことにもあった。
彼女の生き方はとても真似できないけれど、文章の書き方は学ぶべきところがたくさんある。
本名が書けない理由は、ある。
トラウマも、ある。
仮名は、煩わしい。
スッキリしない。
本名で書けたら、どんなに楽だろうかと思う。
でも、書いた後の影響と、その後の対処方法は、正直なところわからなかったりする。
蓋を開けなきゃ、わからない。
さあ、どうする?
と、考えていても夜がふけるだけなので、
しばらくは「六本松さくら」でいこう。
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