大好きなYouTuber咲熊さんのお姫様動画。藤原高子(たかいこ)。
そう!伊勢物語である男と駆け落ちした高貴の姫君です。
実家に置いて来て捨てられて消えていた本。もう何があったか全部は思い出せませんが、確かこれがあったはずです。
杉本苑子先生の短編集。
こちらは、藤原家の台頭専横を苦々しく思う在原業平が、高子の入内を阻止するべく横恋慕を仕掛けるという出だし。
だがしかし、盗み出したが追手に捕らえられ、奪い返される高子の涙を見て、後悔と高子への愛を思い知るという流れでした。
一方咲熊さんは、高子が五節の舞姫として舞台に立った美しさに、業平が惹かれて口説き落としたと。
そりゃあ咲熊さんの説の方が断然ロマンチックで支持したいけど、始まりは苑子先生の方かなあ。業平は権力者になびかない反骨精神の人ですから。
だけど逢瀬を重ねていくうちに、思いがけずミイラ取りがミイラになったみたいな。
そうでなければ
月やあらぬ 春や昔の春ならぬ わが身ひとつは もとの身にして
は詠めないでしょう。
光源氏みたいに(あれ?空蝉じゃない?じゃ継娘の軒端荻でイイや)「あなたがずっと好きでした~!」ってやればいいんですよ。
まあ、業平も派手にやっちゃってますけどね。咲熊さんの「もげてしまえ~!!」で、鼻からお茶吹きましたわ。咲熊さん、サイコー!
でも派手にやりながら、業平はその時その時の相手をちゃんと本気で愛している。だから1200年経っても人の心に突き刺さる歌が詠めたと。
苑子先生の短編では、業平と引き裂かれて涙の一生を送った高子が、最後は自暴自棄的に僧侶と密通したとして皇太后位を廃されたところで終わってたと思います。
でも咲熊さんの動画では、33年後復位されたとのこと。権力争いに巻き込まれた冤罪の可能性が高いと。
よかった!うれしい!
高子様は歴史に残る逃避行から連れ戻され、親族の思惑通り入内して生まれた皇子は即位した。義務と責任を果たして一族に栄達をもたらしたのです。
なのに邪魔になれば不名誉な濡れ衣を着せて追い払われて。…私こういうのすごく納得できません!
名誉を回復されてたと知れてよかった!
咲熊さん、すごい説得力のあるハッピーエンドをありがとう!!
あと高子様、業平との恋なんて知らずに入内して一生を過ごせた方が幸せだったかな、とか考えます。
成就する方が難しい恋。逃げ切れてても、深窓の姫様が屋敷外で生きていくことはできなかったでしょう。
でもこの大恋愛があったから、業平の絶唱の数々は生まれたわけだし、1200年も後の世界で人々の心を揺さぶることができています。
じゃあ、やっぱりよかったよね?高子様。
何の写真か全く意味不明に見えますが、芥川の土手。業平と高子が追っ手につかまったとされる芥川です。
去年成田着が遅れて乗り継ぎ便に乗れず、新幹線で帰った時の車窓から撮影。
「多分この辺」と思って撮ったら、携帯に出た地名でビンゴでした。なんの痕跡も情緒もない、ただの住宅地ですが。