源氏物語を読んだ人なら、紫の上が現実にはありえない完全無欠、欠点がないのが欠点だという人物だとご存知でしょう。
源氏が「嫉妬深いのが玉に瑕」と言うけど、それは魅力であって欠点ではないし。
長所は書き並べるのも面倒くさいほど、ありとあらゆる美徳が連なっています。
タイトルの欠点ですが、紫の上って身分で人を見るんですよ。
紫の上は大勢いる女君の中で、朝顔の宮と明石にはトップの座を脅かされて苦しみ、女三宮の降嫁で衰弱死のような最期を迎えます。
朝顔の宮は身分は高いけど源氏にはなびかない。
明石は自分の不利な立場を理解できる聡明さがあるので、うまく立ち回って敵対しなかった。
なのに紫の上は明石相手だと源氏に結構言うんですよね。身分が低いから。
低いったって母の明石の尼君は皇族だし、受領って今なら県知事。江戸時代なら大名。全然低くないし!!
それに財力も後ろ盾も、明石の方が紫の上より断然盤石!…まあ、平安時代は受領ってそういう立場だったみたいですけどね。
紫式部先生も受領の娘で、でも何代か前は公卿だった。という点で明石一族とは似通ってます。
空蝉や浮舟も受領の家族というので、源氏や薫に見くびられます。私は薫が浮舟を身分で軽んじてるのにはムカついてます。浮舟は好きなキャラでもありませんけど。
だから紫先生は、ご自身の出自と当時の女房という立場、周囲の扱いに思うところは多々あったんでしょう。
昭和の時代劇は、暴れん坊将軍とか水戸黄門みたいな身分の高い人が不動の絶対的正義というのが人気。視聴者も何の疑いもなく喜んでいました。
なのに紫先生は女三宮降嫁でヒロイン紫の上を奈落の底に突き落とします。身分が高いからって、ヒロインだからって容赦なし!…すごいですねえ~。千年前にですよ。
大体人に上下をつける人は、不平不満にさいなまれてるのに自分で解決できない不幸な人。そうやって自分の不幸から目を背けてると、自分が落ちた時に立ち直れない。紫の上は逃げ場がないから仕方ありませんけどね。やっぱり紫先生すごいなあ。
私も実害は受けてないと思うけど、ムカつくことはありますよ。そういう相手だと分かったら黙って速攻逃げます。相手にするだけムダですから。(それ以上に日本人で優遇してもらってる方がずっと多いです。)
それを何百年もされ続けて苦しんだのを今、挽回中なんでしょうね。すごいエネルギーと知性だと思いますよ。でも巻き込まないで。それだけ。
これどこにも書かれてないけど、以前から引っかかってたし、最近のことも含めて書きました。
それに私は紫の上派でも明石の君派でもありません。
宇治の紫式部像。紫先生服役中。JRの奈良線が止まった大雨の次の日でした。
増水した宇治川の河原に降りられないように、フェンスがかかってたんです。
増水した宇治川と宇治橋。滋賀県の皆さま、いつも琵琶湖の水ありがとうございます!
この上流にある浮舟(と匂宮)像へ行く道は、増水で通行止めでした。
おまけ。下水のマンホールも雅~。