初老の男性 が歩いていた。
ゆっくりとした足取り。
優しく微笑んでいることが
緩んだ眼もとから感じられる。
ゆっくりとした足取りで男性 はやってきて
目の前の誰かにこう伝えた。
「大丈夫だよ。 ありがとう。 心配しなくていいんだよ。」
「大丈夫だよ。」
そう伝えられてはいるものの
男性 の口元は優しく微笑んだまま。
声帯を使わない別の方法で
「大丈夫だよ。」
・・・ と
その言葉は伝えられてきた。
男性 は白い着物に白い帯。
いわゆる白装束といういでたちで
足元には草履をはいていた。
導かれるように目がいく足元。
その足元の草履。
右足だけ紐が結ばれずにほどけており
外れがかったままの足でゆっくりと歩いていた。
仲良しの元同僚はミラクルだ。
いつも不思議なものが見えたリ聞こえたりする。
そんなミラクルしんちゃん は
離れて暮らす母の死を
夜中の“音”で感じ取った。
夜中の0時すぎ
いつもの通りベッドで休んでいたものの
突然聞こえたざわめきに飛び起きた。
その声は
離れて暮らす姉の声。
500Kmも離れた場所で母と暮らす姉の声だった。
驚いた悲鳴と救急車を呼ぶ慌てた声。
ミラクルしんちゃん は聞こえたという。
お散歩途中
どうにもこうにも気になった藪の奥。
藪の奥に行ってみると
そこには荒れたお墓が1つ建っていたとか。
やけにリアルな夢の中。
どうも出産間際に亡くなったらしい産婦さんが登場してきた。
産婦さんのご先祖らしき方も登場し
しんちゃん はお願いされたという。
「子どもを産ませてやってくれ」
医療者であるミラクルしんちゃん 。
夢の中で出産をさせてあげたのだという。
夢から覚めた現実の後日
これまた視えるらしき女性がしんちゃん に言っていた。
「赤ちゃんを抱いた女性が来ているよ。
ありがとうございましたと言っている。」
仲良しの元同僚。
ミラクルしんちゃん はいつも不思議なものが見えたリ聞こえたりする。
白装束の初老の男性 が歩いていて
足元を見せてくれる。
右足だけ紐がほどけて外れがかった草履をはいたまま。
「大丈夫だよ。 ありがとう。 心配しなくていいんだよ。」
なぜだか男性 はそう言っていた。
お仕事中のお昼休み
4-5人でおしゃべりをしていた時にしんちゃん は
そんな夢の話をしてくれた。
するとそこにいた同僚のみーちゃん が驚いて
目を丸くして説明してくれた。
その内容はこうだった。
数週間前にみーちゃん のおじさん が亡くなった。
みーちゃん の住む地域では
亡くなった方は白装束になる。
遺族は手甲というものを死者の手に当てがい
草履を履かせてあげる。
草履を履かせてあげるのはみーちゃん の役割だった。
みーちゃん は
大好きだったおじさん の足に草履を履かせてあげた。
でも右足だけがあてにくく
草履の紐がうまく回らずに結べなかったのだという。
とりあえず草履はあてがったものの
ちゃんと結べなかった草履の紐が気がかりだったという。
火葬も葬儀も終わったけれど
おじさん はちゃんと歩いて行くべきところに行けたのだろうか。
そんな心配が頭をよぎっていたとのこと。
他の紐を使うとか、何か方法があったんじゃないかな。
草履が脱げて歩けなくて
おじさん が行くべきところに行けなかったらどうしよう。
そんな心配が頭をよぎっていたのだという。
おじさん はそんなことなど全然気にしていない。
かわいいみーちゃん が
自分を心配している気持を感じ取り
しんちゃん を通じて伝えてきたのかも。
おじさん は亡くなった後でもみーちゃん のことが大好きで
心配して見つめてくれている。
そんな驚きと感動がお昼休みの私達を包んでくれた。
亡くなった愛する魂は、
いつも私たちを見ていてくれる。
心を慰め、支えてあげようと寄り添ってくれている。
100%信じきれていないけれど
そう思えるとしたらなんだか心が温まる。
しかしまあ。
ミラクルしんちゃん ったらいったい何者 。