医師の過労死についての考察(その4):みんな頑張っている | 健康は みんなのもの ~皮膚科医のブログ~

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医師の過労死はなぜ起きるのか。
そのいきさつにせまるために、医師の人生を振り返っています。


◆全国の健脚が集う箱根駅伝

今年の箱根駅伝は青山学院大学が優勝しました。
箱根駅伝は、本戦に出場できるのが20校であり、

1チーム往路復路で10人が走ることができます。
つまり、箱根駅伝で走れる人は、全部で200名です。

箱根駅伝を走りたいと、全国から有名大学の陸上部(または駅伝部)に入るのですが、

200名に入れるのは一握りでしょう。

高校で、学校で一番速かった人も、大学に入ったら、そんなわけにはいきません。
全国から足の速い人ばかりが集まってきているのですから。
すぐに、天狗の鼻は折られてしまいます。


◆全国の勤勉学生が集う医学部

頭が良くて、勉強の好きな人が、医学部に進学します。
そこで出会うのが、全国から集まってきた「天才」「秀才」「努力の人」です。

 



医学部に入ってくる人は、すごい人ばかりです。
英単語を覚えるのが苦手な私は、英語が得意な友達に尋ねました。
「どうすれば覚えれるの?」


友人は平然の言ってのけました。
「どうして忘れるの?」

1回見たら、目に焼きついて忘れないそうです。
「頭の作りが違う。こんな人とは勝負にならない」と実感しました。

医学部は一学年が約100名の1クラスしかありません。
この100人が、6年間、クラス替えもなく苦楽を共にします。


幸いなことに、医師国家試験は選抜試験ではなく、資格試験です。
選抜試験は、限られた合格のイスを目指して、しのぎを削るのですが、

資格試験は合格点さえ取れれば、受験者全員が合格ということもあり得ます。

つまり、隠れて勉強して、友人を出し抜く必要はなく、

みんなが一致団結して合格しようという雰囲気があります。
クラスメイトは、目的を同じくして切磋琢磨するライバルであり、

家族みたいなものです。
高校時代と比較にならない猛勉強を支えるのが、志を同じくする友人です。

◆過酷な環境も苦にならない

めでたく医師免許を手にした勤勉学生が、社会に出るとどうなるでしょうか。
もちろん、仕事熱心な人になります。
長年の願いが成就したのですから、嬉々として働きます。

医者になっても、同期の友達と連絡を取り合います。
そこで飛び交うのが苦労自慢です。

「重症患者さんを受け持っていて、3日間家に帰っていない」
「オレなんか、明日で100連勤だぞ。前回の休みは正月だったかな」
「洗濯するヒマがなく、洗濯物が2週間分たまっている」
「いつ病棟に呼ばれるか分からないから、食事は5分で済ませている」

研修医にとっては、食べれない、寝れない、休めないは、自慢の種になります。
「あいつ、頑張っているな。負けておれない」
と、過酷な労働環境も、苦にはなりません。


医師は働き過ぎているという自覚がありませんが、

その理由の一つが、「みんな頑張っている」でしょう。

 



               ~その5につづく~