我慢できない尿もれは、膀胱が突然風船になる | 健康は みんなのもの ~皮膚科医のブログ~

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◆2つの尿もれ

「トイレが近い」
「我慢できずに尿がもれてしまう」
「夜、何度もトイレに起きる」


40歳以上の8人に1人が、何らかの「尿トラブル」を抱えています。
「尿トラブル」の中でも、恥ずかしくてショックなのが「尿もれ」でしょう。

「尿もれ」に大きく2つあります。
1つは、くしゃみや咳をしたときに、

チョロっともれてしまう「腹圧性尿失禁」です。


「尿もれ」は医学用語で「尿失禁」と言いますが、

くしゃみなどで、お腹に強い圧力がかかったときに起きる尿もれです。


もう1つは、急におしっこがしたくなってトイレに駆け込もうとするのですが、

間に合わずにもれてしまう「切迫性尿失禁」です。
この場合、「チョロ」でなく、かなりの量がもれてしまい、

それがトラウマになって、電車やバスに乗れなくなることもあります。

「切迫性尿失禁」を起こすことを「過活動膀胱」と言います。
「過活動膀胱」を理解するために、膀胱のしくみを見てみましょう。


◆膀胱の2つのしくみ

普段なにげなくおしっこをしていますが、

膀胱の精密なしくみのお陰なのです。


膀胱は腎臓で作った尿を、一時ためておく臓器です。
ためるべきときにため、出すべきときに出す。
それを実現するために、膀胱には2つのモードがあります。

〔ためるモード〕
膀胱の筋肉がゆるんで、尿をためることができます。
例えるならば、
膀胱がビニル袋のような状態になっています。

 



〔出すモード〕
膀胱の筋肉が収縮し、ためた尿を尿道から外に放出します。
例えると、
膀胱がゴム風船のようになっています。

 



この2つのモードは、自分の意思によって切り替えることが

できるように思いますが、案外そうでもありません。
寝ているときや仕事中など、出してはならないときは、

自覚なく〔ためるモード〕になっています。


2つのモードのスイッチの切り替えは、

無自覚で働く自律神経によるものが大きいのです。

◆排尿のメカニズム

脳と膀胱は連絡を取り合っています。
膀胱に尿が150mlほどたまると、膀胱は脳にイエローカードを出します。
脳は、今おしっこをしてもいいかどうか客観的に判断します。
仕事中でトイレに立つことがはばかられる場合は、

膀胱からのメッセージを無視します。
 

膀胱に尿が250mlたまると、膀胱はレッドカードを出します。
脳は体に命じてトイレに行かせます。
スタンバイができたあと、〔ためるモード〕が〔出すモード〕に切り替わります。
ビニル袋のような膀胱がゴム風船のようになり、たまった尿を勢いよく発射します。


以上が、排尿のメカニズムですが、これに異変が起きたのが「過活動膀胱」です。

◆出してはいけないときにゴム風船に

「過活動膀胱」の「過」とは、「過剰」の「過」、「過敏」の「過」です。
〔出すモード〕になってはいけないときに、

膀胱がゴム風船のようになってしまうのが「過活動膀胱」です。
いわば、勝手にゴム風船になってしまう病気と言えるでしょう。

突然に強い尿意をもよおし、風船の口をしめるように

尿道をしめようとするのですが、我慢できずにもれてしまうのです。


なぜ、そうなってしまうのか、

病気のメカニズムは完全には解明されていませんが、

日々の運動の重要性が言われています。



参考文献
1)奥井識仁 監修:『図解よくわかる女性の尿もれ男性の頻尿をぐんぐん解消する!最新治療と予防法』,日東書院,2016