江上冴子『桜咲く、桜散る』桜咲く、桜散る (広済堂アテール文庫)/江上 冴子明治時代、群馬から上京した帝高生、智和は怜悧な美貌の才人、貴臣の書生となる。貴臣は癇が強く、神経質なため周囲は手を焼いているが、彼は孤独ななかで勉学に命を注いでいる。お世話をしていくうちに、智和は貴臣の厄介な部分もきちんと理由があり、誠意を尽くせば答えが返ってくることを知っていく。ふたりの関係が深まるにつれ、まっすぐな智和が成長していく姿が微笑ましい。貴臣の孤高で執念の姿は読んでいて切なくなった。原題が『君子蘭』と知り、なるほど。