その日も朝の通勤ラッシュに満員の中、僕は揺られていた。僕の目の前にはジャケットを羽織り、髪をワックスで整え、眼鏡をかけた如何にもエリート風の若い男性が同じように揺られていた。彼はタブレットでニュースを見ているようだ。私はこのような仕事のできるカッコいい人間になりたいと彼を見ながら考えていた。すると、彼はとんでもない行動に出たのだ。ニュースに夢中になるあまり、彼は右の人差し指を自分の右の鼻の穴に差し込んだのだ。そして、その中でグリグリと指を動かし、手応えを感じたのか、指を抜き取ると、彼の指先には薄黄色に輝く角張ったハナクソが乗っていたのだ。そして、彼はそのハナクソに満足感があったのかそのハナクソと見つめ合い、親指も交えて丸め出したのだ。そして再び人差し指の指先に乗せたところで私と目が合ってしまった。恐らく何処かへ飛ばそうとしていたのだろう。彼は乗せたハナクソを見られていることに気づき、鼻くそを何処かへ飛ばすのをやめ指の上で転がして、考えた後自分の胸ポケにしまった。お互いそんな事は望んでないのに。しかし、今思えばそれが一番正しい判断だったのかも知れない。