ものごとには何にでも始まりがあるわけで、私はいつからお人形の服を作るようになったのか、
ウェディングドレスを作るようになったのか、
記憶と記録をさかのぼってみました。

お人形の服を作るようになったのは、梨木香歩の「りかさん」という本を読んでからです。

この本は、雛祭りに”ようこ”がおばあちゃんに「雛祭りに欲しいものあるかい?」と聞かれて、「リカちゃんが欲しい」と言ったら、おばあちゃんが
「人形なら、ようく、知ってる。お人形のりかちゃんなら気だてのいい子だ。雛祭りにはぴったりだ……よし」
と言って、黒髪の市松人形の”りかさん”を送ってくれたところから始まります。

”ようこ”は、こんなのリカちゃんじゃない…と落ち込みますが、おばあちゃんの”説明書”どおりに、朝に着替えさせてごはんの用意をする、そんな日々を送ります。

すると七日目、急に、となりに座っているりかちゃんから、ぶわーっと生温かい空気が押し寄せて来ます。そしてそして…

ーだいじょうぶよ。
今抱いているりかちゃんから声が聞こえた。びっくりして、思わず、
「うわ、りかちゃん、しゃべれたのかあ」
と、ようこも声を出した。人間っぽくなったとは思ったけれど、まさか話ができるとは思いもしなかった。 (抜粋☆)

そうやってようこさんはりかさんに導かれ、お人形のいろんな思いに満ちた、そんな世界に入っていくことになります。

りかさんは衣装持ちで、手縫いの着物をたくさん持っていて、ようこさんは毎朝着替えさせてやるのですね。
そこで私はガーーーン……となったのでした。
お人形の服、作る、と言いましたか… という風に。

人形の服を作る、という扉がバーーーン!と開いた瞬間でした。