ハルヒが小学4年生の頃。

 授業参観前に教室に入ると、「あっ! ママ〜」と、笑顔で駆けてくる我が子に、思わず両膝をついて両手を大きくひろげた。

 ハルも両手を広げて、スポッと綺麗に飛び込んできた。

 

ーーー可愛かったな。

 小さくて、甘えたで、声のキーも高かった。



    

見せ場を作って


 授業参観が、仕事の締め最終日だった。

 参観に行く為に上司や仕入れ先に頭を下げて数週間前から仕事を調整して、前倒しで詰めて残業してやっと作った時間だった。

 お昼まで仕事して、12時にタイムカード押して、車で帰宅して服を着替えて、学校まで歩いて行った。授業が始まって10分遅れで教室に入った。

 その日は、ダラダラ授業するだけで、ただただ眠かった。

 ずっと、ハルヒの後頭部を見て終わってしまった。

 授業が終わったらまた歩いて家まで帰って、制服に着替えて車で会社に向かって…なんで?こんなに頑張ったのに、こんな報われない?


ーーーその日の夜、ハルに、『見せ場』を作って欲しいと頼んだ。

 「ママ、授業参観に行く為に何日も前からお仕事頑張って…なのに…ハルの後頭部しか見れなかったんだよ。そんなの嫌だよ」


 「だから、ハルちゃん。今度から、『見せ場』を作ってくれない?」


「例えば、『ハイハイハイ!』って、手を上げて発言したり、『これ出来る人! やりたい人!』って先生に言われたら、やって欲しいの。前に出て頑張ってる所を見せて欲しいの」

 

ーーー我ながら何という無茶振り。

 ごめん。ハルちゃん。




 今日は、授業参観日なの。ママに『見せ場を作って』って言われたの。

 だから、ハルちゃん、がんばるの。

 でも、授業が始まったけど、まだママは来ない。ママ…まだかなぁ。



 午後からの授業参観は、仕事の関係でいつも少し遅れてしまう。今回は、結構ママさん達来てるな。かき分ける様に教室に入り1番後ろの真ん中に陣取った。


 ハルは、ママが来てるかどうか気にして後ろばかり見ていた。まったく、落ち着きのない子。

授業に集中してくださいよ。


「あっ! ママ!」ハルヒは、私を見つけると、「ハイ!ハイ!ハイ!」と、急に凄い勢いで手を上げはじめた。

 

 ママが来た。ママに良いところを見てもらうの。先生!僕を当てて!


「はい!じゃあ、ハルちゃん」

 やった!当てられた。

「答えは、〇〇です」

「はい!正解です」

 やったー!ママ、僕がんばったよ。後ろを振り返りママを見た。

ママは、嬉しそうに小さく頷いてくれた。

『みてたよ!すごいねハルちゃん』


「つぎの問題は、どうかな?」先生が、言うと、生徒達が次々に手を上げる。

 こんだけ生徒がいるのに一回当たっただけでも良しとしよう。もうしばらくは当てられないだろうと思っていたら、結果5回程、ハルを当ててくださった。


 ハルヒがママに『見せ場』を作る為に頑張って手を沢山上げているのが先生に伝わったのかもしれない。

たくさん当ててくださり有難う御座いました。


  その日の夕飯時、『ハルちゃんが参観で、5回も当てられて発言した』事を言うと、『凄いね、ハルちゃん』と、家族みんなに褒められた。


 ーーーママ、ぼく『見せ場』作ったよ。

 ぼく、がんばったでしょ?


 ーーーうん!有難う、ハル。無茶振りしてごめんね。


 よくよく考えたらハル、頭いいのかな?そもそも問題の答えが分かってないと手を上げれないよね。いつも分かってるけど手を上げてなかったって事だよね…やれやれ。


この作品(話・番組・動画)はフィクションです。 実在の人物や団体などとは関係ありません。


授業参観で記憶に残ってること

 

 

 

 

 

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