秋田内陸縦貫鉄道、角館駅ホーム。

初めて乗ります。

 

1両だけの気動車。各駅停車です。

 

オレンジ色の車両に、オレンジ色のクロスシート。

 

よく見ると、秋田犬の柄です。

 

車内にも秋田犬。

 

9:50発車。盛大なお見送りがありました!

 

しばらくは、田園地帯を走っていきます。

 

遠い山がきれいだー。

 

田んぼの満々とした水が、雲を映しています。

 

角館を出て最初の駅、羽後太田駅。

 

秋田駒ケ岳が見える駅ということなんですが…見えてるの?どうなの?

 

谷津駅。かたくりの里らしい。

この駅で待ち合わせをしました。

 

反対側からの列車を待つあいだ、ホームに出て風景を眺めます。

 

やがて、反対側から角館行がやってきました。

クリーム色に赤ラインのこの列車が、標準的な色なんだそうです。

 

八津駅を出ると、しばらく、林の中を走りました。

 

羽後長戸呂駅。

どの駅にも、今もちゃんと集落があります。飯田線のような「秘境駅」ではありません。

山はあっても平地もあり、田んぼが作れるからかな。

 

左手に見えているのが桧木内川。角館の町の中で見た、あの川の上流。

桧木内川に沿って国道と、秋田内陸縦貫鉄道が並走していきます。

 

羽後中里駅。

この羽後中里駅のひとつ前、松葉駅から、この先の比立内駅までの間は、この路線の中で最も後につながれた部分です。

羽後中里駅も、その際に新設。そう思って見ると、さっきの八津駅の駅名票より新しいです。

 

そもそも

・角館駅~松葉駅の南側(国鉄角館線)

・鷹巣駅~比立内駅の北側(国鉄阿仁合線)

があって、いずれその間も繋ぐ…つもりだったのだけれど、国鉄民営化の際にどちらの路線も廃止対象に。

それを受けて、「秋田内陸縦貫鉄道」として再出発し、残されていた松葉駅~比立内駅の間もつないだ、という歴史。

三陸鉄道とちょっと似ています。

 

 

アテンダントさんが乗ってて、切符の確認はもちろん、沿線の案内もすれば、物品販売もします。由利高原鉄道と同じ。

おやつに、「笑内のチーズ饅頭」を買って食べました。

 

それにしても、このテーブル、便利です。

どこ走ってるかわかるし、急行停車駅も表示してあります。

 

上桧木内駅が近づくと、比較的大きめの集落。

 

 

ここは「紙風船上げの駅」なんだそうです。紙風船上げって??

手でポンポンつく、アレじゃなくって、もっと巨大なもののようです。

何メートルもある和紙で造った紙風船の下に、灯油を染みこませた玉をつけて、燃やして上げるそうです。例年2月、いちばん寒い時期。

それはそれは興味深いです…

 

集落を離れても、ぽつんとまだ家があるんだなあ…どんな暮らしなのかなあ。

茅葺き屋根だったと思われる家。よく見ると雪囲いがそのままなので、今は住んでないみたい。

 

トンネルの前に、ポツンと小さな駅があります。戸沢駅。

 

ここが秋田県内でいちばん高い場所にある駅。

ここからトンネルに入って、峠越えです。

この山があるから、最後までこの部分の開設が残っちゃったのですね。

 

このトンネル(十二段トンネル)は、5キロ以上続く直線。

もし平坦なら、入り口から出口まで、ずっと見通せるはずです。

でも入ってからはずっと上りで、しばらく出口は見えません。

 

ず~っと走っていくと、頂点にさしかかり、先にポツンと光が見えました。ちょっと感動的。

この瞬間に後ろを振り向くと、今入ってきた入口も見える。

入口・出口、両方見えるのは、わずか10数秒間なんだそうです。

 

アテンダントさんが案内してくれるので、車内の人々ワイワイと、前を見たり後ろを見たり。

一両だけなので、前も後ろもすぐ見えるのがいいです。

 

トンネルを出ると、森吉山の麓です。

すぐ、阿仁マタギ駅に到着。

かかしが手を振ってお迎えしてくれています。

 

この阿仁マタギ駅で、この列車を降りました。

ほぼ1時間後に来る次の列車に乗るまで、しばしここで過ごします。

 

マタギが待っていました。

マタギだけじゃなくて、車も待っていてくれました。

阿仁マタギ駅から、「マタギ資料館」まで送迎があると知って、昨日頼んでおいたのです。

 

お迎えの車に乗って、線路沿いの道を、今来た方へ戻ります。

 

山の中を走り10分ほどで、「打当温泉マタギの湯」に到着。

 

ここは日帰り入浴もできる旅館です。

 

ロビーには、マタギの獲物となった熊。

マタギ資料館は、この宿に併設されています。

宿に泊まらないのに。日帰り入浴もしないのに。マタギ資料館一人200円のために、わざわざ無料で送迎してくれるなんて…ありがたい限りです。

 

マタギ資料館。

マタギの家の再現。

といっても、熊の毛皮は高価な売り物なので、こんなふうに敷いたりはしないらしいんですけど。

 

古来から鉄砲も使って、農作業ができない冬の間、熊を捕ってきたというマタギ。

集団でどうやって熊を追い込んで仕留めるのか等、詳しく解説がありました。

道などない山の中、力を合わせて命がけの生業。

 

でもそれに見合うほど、熊の毛皮や内臓(熊の胆など漢方の原料)など、価値あるものとして取引されていた訳です。

 

テンやキツネなど、森の動物たち。

 

「山立根本の巻」。

これがあれば、どこの山にもお咎めなしで入れたとのこと。

「マタギの祖である万事万三郎が、山の神に狩猟をして殺生をすることを許された」ということを示す書で、マタギの根幹を成す、誰にも見せなかった秘伝の書だそうです。

 

昔の価値観の中では、動物の殺生をするというのは、たいへんなことだったんですよね…

 

江戸時代、この阿仁のあたりでは金山、銀山、銅山があったそうです。

明治時代にも銅山として栄えたということで(1970年閉山)、だからこの山の中に鉄道も通ったわけですね!

 

外に再現してあった、山での滞在に使うマタギ小屋。

「マタギ」=「クマを捕る人」くらいのイメージしかなかったけど、少し勉強しました。

 

鳥の声を聞きながら、帰りの車を待ちます。

マタギ資料館の前は、まだこれから田植えみたいです。

 

再び、阿仁マタギ駅まで、送ってもらいました。

 

列車を待つ間、たくさんいる、案山子たちを見てました。

田畑で働いてたり、のんびりと魚釣りしてたり、案山子たちの生態も様々です。

 

駅舎の中には、かかしコンテストの投票箱。

 

こちらの田んぼでは、案山子…じゃなくって、本当に田植えの最中。

手植えでした。

 

阿仁マタギ駅のホームに出ます。

線路の下(写真右側)には阿仁川が流れています。

峠を越えたので、この阿仁川は、北へ向かって流れ下っていきます。

今後は線路も、阿仁川に沿って北へと下ることになります。

 

列車がやってきました。今度は「急行もりよし号」。

 

比立内駅で、行き違いをしました。ずいぶんいろんな色の列車があります。

比立内駅から先は、旧・国鉄阿仁合線。

阿仁の銅山の鉱石を運ぶために敷設されたのがはじまりだそうです。

 

さきほど、「笑内チーズ饅頭」を買って食べた、その笑内駅。

でも今乗ってるのは急行なので、笑内駅には停まりませんでした。

 

萱草駅手前、阿仁川にかかる、大又川橋梁。

見どころということで、列車はゆっくりと走ってくれました。

 

萱草駅~荒瀬駅間。

 

このあたり、駅を離れると、まだまだ山深い。

 

そのうち、阿仁川と周囲の様子が、少しひらけてきました。

 

阿仁合駅。沿線でいちばん大きな町でした。

 

今までもいろいろ見ましたが、さらにいろんな色の車両が停まっています。

 

これは秋田マタギ号だそうです。

阿仁合駅を出る時には、角館駅と同じように、駅の皆さんが盛大に手をふってくれました。

 

阿仁合駅を出ると、阿仁川もさらに広くなってきてきました。

 

このあたりからは、田んぼと森とが交互に現れます。

森にはいると、藤の紫色とともに、桃色の花が目立ちます。(写真が撮れない…)

アテンダントさんにたずねてみたら、これは「ヤマウツギ」だそうです。

 

このあたりからは、田んぼアートがいくつか、出てきました。

小渕駅直前、田植えが終わったばかりの田んぼに、ロープがあちこち張ってあります。

 

よく見ると、笑顔のキャラクターが描いてあります。

絵柄をロープで区切って描き、どの種類の稲をどこに植えるか、わかるようにしてあります。

 

また別の田んぼアート。前田南~阿仁前田温泉間。

 

ここは、まだ田植えはこれから。ロープと棒で仕切ったところ。

その下に、みんなが歩き回った足跡。

田んぼアートを楽しめる時期じゃないと思ってたけど、思いがけず「たんぼアートの下描き」を見ることができました。

 

すっかり里に出てきました。

 

阿仁前田温泉駅。駅舎に温泉が併設。

 

山ウツギ(がうまく撮れなかったやつ)。

 

景色はいっそう、ひろびろとしてきました。

 

合川駅。「鎌沢の大仏様最寄り駅」と書いてある。どんな所だろ。

 

 

またまた田んぼアート。

 

縄文小ヶ田駅。伊勢堂岱遺跡の最寄り駅。

伊勢堂岱遺跡には後で来る予定で、とりあえず通過します。

 

この大河は米代川。

はるか昔、八郎潟を造った砂を運んだ川のひとつだ。

 

鷹巣駅に近づくと、町になって、JRの線路が見えてきました。

 

終点、鷹巣駅に到着。

 

角館からはるばると、岩手内陸縦貫鉄道を乗り通せて、よかったです。

 

向こうのホームは、JR奥羽本線なのですが…あっちは「鷹ノ巣」駅?

「ノ」が駅名に入ってるのと、入ってないのと。差別化を図っているのか。

 

ここからJRに乗り換えて、弘前まで行きたいなあ…とも思うけど。

鷹巣駅で、降ります。

 

秋田内陸縦貫鉄道、「鷹巣」駅。

 

隣にはJR「鷹ノ巣」駅。

 

駅前。きわめて静か…

 

でも、タクシーはいます。

タクシーで、世界文化遺産登録の縄文遺跡、伊勢堂岱遺跡に来ました。

 

(先ほど通った縄文小ヶ田駅で降りればすぐここに着いたのですけれど、内陸線を乗り通したかったので、わざわざ終点まで乗って、戻ってきました。)

 

内陸線からも見えた、真新しい資料館。

 

遺跡は、ここから少し歩いた所にあるみたいです。

 

時間もないので、資料館は後廻しにして、とにかく行ってみた。

丘を登っていくと、高台にまあるく、石が並んでいます!

なんだかわかんない。けど、なんだかすごい。

 

みな黄色っぽい、丸っこい石。

何にも説明はない。

 

でもたぶん、あの立ってるのは、掘建柱の跡の表示でしょう。

 

丸のなかに、十字型に直線が引いてあるところも(〇に十字の組み合わせ)。

 

かなり高台にあります。

周辺の木を切り、芝を張って、遺跡が見やすいように整地してあります。

発掘してみたらこんなストーンサークルが出てきたら、興奮しただろうなあ…。

 

遺跡を見たあと、資料館に引き返します。

資料館の近くの場所に、造ってそのまま放置された高速道路の橋脚がありました。

遺跡保存のため、空港へのアクセス道路が計画変更された、その遺物。

 

資料館。

入口には、ここで出土してシンボルとなっている板状土偶。

ここ、遺跡見学も含め無料。係の人が、説明もしてくれました。

 

本物の板状土偶も展示してありました。

この板状土偶は、ここで唯一、完全な形で出土した土偶なんだそうです。

土偶が壊されていない状態で出土する例は少ないはず。

 

こちらは、土偶の破片。溝を切って、線をひいてあるものが多いです。

 

他にも数多くの出土品。三角形のもの、渦巻き状のもの、円形のもの…

用途がわからないから、とりあえず形で分けるしかないんだなー。

 

そもそも内陸鉄道(旧国鉄阿仁合線)を敷設する工事の時に大量の土器が出土したのが発見の始まりだったそうです。

 

鉢など。渦巻き模様が目立ちます。

 

ひょうたん型の土器、石の刀も。

出土したその場で、本物を見せてくれるって、臨場感があっていいです。

 

遺跡の全体像。

 

同じような石に見えたけど、実際はいろんな石が使われていました。

 

半円形の遺跡は、壊されたのか、もともと半円形だったのかは、わかっていないようです。

伊勢堂岱遺跡の存在を知ったのは一昨日。秋田に来てから。

帰りに飛行機に乗る前に、ここ行けるんじゃない?と思って来てみたのですが、見学できて本当に良かったです。

 

増田の蔵の町とかマタギ資料館とか伊勢堂岱遺跡とか。今回は現地で初めて情報を知ったような所にいっぱい足を運びました。それもまた楽しかったです。

 

遺跡からはまたタクシーで、大館能代空港に到着。

 

旅を締めくくったのはこれ、「縄文スペシャル」。

キャラメルソースもかかって、美味でした。

ところでこの板状土偶のキャラクターは、「いせどうくん」というそうですが、男と決めないほうがいいのになー。

 

大館能代空港、また来ることあるかな(ここから弘前近いしな。)

 

帰宅しての晩御飯。