「COCOON 星ひとつ」5/31大阪公演の、考察でもなんでもない感想文です。



※毎度のことながら、今作とTRUMPシリーズすべてのネタバレが多く含まれますのでご注意ください。

 

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ここで『星ひとつ』からTRUMPシリーズに入られた方のために、過去作のおすすめをしておきますね(全部DVD出てます!)。

 


一番のおすすめは、ダリの苦悩の背景が分かる『グランギニョル』です。ウルの生誕にまつわるお話です。
また、本作の本筋は1作目の『TRUMP』に基づいておりますので、こちらはソフィ視点で全く同じ物語が展開します(DVDはD2版REVERCEを選ぶと三津谷さんのソフィ、D2版TRUTHかNAPPOS版TRUTHを選ぶと陣内さんのクラウスが見られます。2人とも若い)。

あとは小さな伏線回収として、以下にあげておきます。
「ネブラ村の生き残り」 → 『SPECTER』
「ダミアン・ストーン」 → 『グランギニョル』
「女の子をたくさんだ」 → 『LILIUM』

 

ここに唯一あげていない直近作の『マリーゴールド』は、今作の物語には直接関係しませんが、別人のように変わり果てた三津谷ソフィが見られるので、こっそりとおすすめしたいところです。

皆さまもレッツ繭期!
 

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本題に入ります。

※これも毎度のことですが、観劇前提で喋ってるので、ネタバレそのものをお求めの方にもたぶん向かないと思いますのでご了承ください…。


『星』、好きすぎる……。なにこれ今までのあらゆる伏線をまとめて元祖作品『TRUMP』に還元した感じじゃないですか……。まさにTRUMPシリーズ10周年にふさわしい作品だと思います。
思わず、アンケートの歴代シリーズで好きな作品で『星』に投票してしまったくらい好きです(めいめいオタなのに)。

 


新たに考察を加えるというよりは、今までの作品の記憶にしみ渡っていくような物語だったので、今回は記憶の確認というか、正直いつもみたいな感想が書けない予感がしています。語彙力を失ったオタクの戯れ言になりそうなので、もう少しまともな内容が良いって方は『月』の感想文をおすすめいたします。『月』の方が、正気な思考で正気じゃない文量を書いてるので。


もう、あの世界、この世界が、あの役者さん、この役者さんで再現されている感動……。
「神様、私はいま、奇跡を目の前にしている……」って感じでした。
キャスパレの時点で、(あかん、これやばいやつ観に来てしまった……)って本気で思ってました。同時に、今日一度しか観られない悲しみに開幕時から闘ってました……。


◆ダリ、そしてウル

初っぱなからグランギニョル衣装のダリちゃんに感激しすぎて、自分で思っていた以上に「グランギニョル」という作品やダリちゃんというキャラクターを気に入っていたんだなぁと気がつかされました。
ちょっと考えれば分かりそうなもんですが、本当に染さまさんがダリちゃんをやるとは予想してなかったんですよ。

ダリ、『TRUMP』の裏でも色々と立ち回ってがんばっていたのだなぁ……。
クラウスと接触していたことも驚きです。クラウスとのやり取りからは二人の息子への愛情が伺えます。

そんな愛情をもちながら、ダリは意外と致命的に不器用なので、ラファエロを破滅に至るまで追い詰めてしまいます。どうしてなの……!というのは本人が一番思っているんでしょうね。唯一自分に盾突くことができる萬里に、自分を殴らせていますから。

また、ダリはソフィがファルスにされることを知っていたも同然だったのですね。でも、それがヴァンプ界の平穏に繋がるのならば、彼はヴラド機関の貴族として、ソフィの犠牲を厭わない選択をしたのでしょう。彼の使命を思うと恨めない……。
ラファエロがソフィへの殺意を明確に示した瞬間、ダリが「何ということを……」と崩れ落ちるのは、ソフィへの殺意がTRUMPによる抹消に繋がると知っていたから。ダリは何度グランギニョルを経験すればいいんですか……。

「ダンピール(ソフィ)に関わるな」というダリの忠告は、単にウルが不安定になるからだけじゃなくて、息子たちがグランギニョルに巻き込まれることを心配しての発言だったんですね……。

ダリが守れなかった「星ひとつ」は愛する妻であるフリーダでしょうね。
フリーダ様ぁぁ。もういないんですよね。
「ラファエロは母親に似た。ウルは…、俺に似て男前だ」
こういう細かい心遣いに、ウルへの愛情を感じて切なくなりました。あと、この時の他の貴族連中のアホ感なんなの!おもしろかったけど!笑 私事ながら、日本の貴族を研究してた時期があるので、貴族をあほっぽいステレオタイプで描かれるとつい反応してしまうんですよ……。

ウルは焼け落ちるクランの中で眠ったのかと思っていましたが、お父様にちゃんと弔ってもらえていたのですね。もう、その事実だけで泣けてきてしまいます。
「ドブネズミくせぇー」の一言に愛情が溢れすぎていて、めっちゃ泣きました。
でも、よく考えたらウルの出生の本当の秘密(ダリの実子でないこと)や、実父ウル(ダミアンコピー)の呪いについては誰も知ることなく、ウルは眠りについたのですから、そういう意味ではダリはウルを守り抜けたのではないかと思っています。

『星』でも時々現れる陰翳は、ウルが絶望の呪いにとらわれている暗示、という理解でいいのでしょうか。


ウルは、ソフィは希望だと言った。
ダリは、ウルにとってのひとつの星はソフィだと言った。


ウルが「友達」のソフィを刺し殺せなかった瞬間に、ダリの「負けるな」というイニシアチブが実父の呪いに打ち勝ったのだと『グランギニョル』時点で私は解釈していたのですが、ダリが慈しみを込めて「友達ができたんだな」と呟いた時、その解釈は概ね間違っていなかったのだと感じました。
本作、今までよりソフィとウルの「友達」関係について掘り下げられていた気がします。


◆閑話休題、ダリちゃん関係のお戯れ。
「椅子人(いすびと)を用意しろ」のセリフに、(え……、あの人たち椅子人って呼ばれてたんや……笑)と、一人プルプルしておりました。あんまり笑ってる人がいなかったのは、聞き取れなかったからかな?

たぶん他にきちんとレポしている方がいらっしゃると思うのですが、自分のためにも大阪初日のアドリブ?をメモしておきますね。

①ダリちゃん登場時の「ダーリちゃーん!」コールにて、直後に「かっこいー」と叫んだお客様が。笑
ダリちゃんの答え「言われなくとも知っている」

②椅子人さん撤収時に一人の役者さんを捕まえ、「お前は帰るな!」と引き留める
「お前の女の子の好みのタイプを言え!」
絞り出されたのは、
「胸が………、ふくよかな方………」
「男はみんなそう!!!」(バシーーン)
という流れでした。原文ママでお送りできず申し訳ないです。
その後、グスタフも笑いをこらえながらこう言ってくれるので、しばらく会場のクスクスが止まりませんでした。
「ダリ卿……お戯れが過ぎるのでは……(笑)」



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◆ソフィ
今回の2作品の中でダントツで泣いたのが、ソフィが炎の中でウルの亡骸を守り続けていたという事実です。

不死を手に入れてしまった慣れない身体で、どれほどの時間、一体どんな気持ちでウルを庇い続けていたのでしょう。もう、そのことを想像するだけで哀しくて哀しくて。「君は優しい奴だな」と言われるソフィが好きです。その後の世界でどれほど歪んでしまおうとも。
無力を突きつけられたウルへの噛み跡は切ないものですが、ソフィがウルを守ろうとした思いはしっかりとダリに届きました。あのダリが「クズなどと言ってすまなかった」と言うほどに。

 

それにしても、クランで剣術稽古をするソフィとウル、本っ当に楽しそうなんですよ。この時からすでに彼らはかけがえのない友達です。


◆ラファエロとソフィ
NAPPOS版『TRUMP』の際、彼らの関係はほんの少し接近したものとして描写されていましたが、今回はそれがカットされていたように思います。

別にラファエロはソフィを助けたわけじゃないとか、ラファエロが真剣を用いた際のソフィの「これは真剣…!〔どうして貴方が〕」の〔〕部分がなくなっていたりとか。

まぁ、今作の視点はウルなので不要といえば不要なのですが。『月』を経ていると、ラファエロは本当にウル(とダリ)以外眼中にないんだなと確認させられてしまったので、NAPPOS版で見られたソフィとの曖昧な絆のようなものがなくなって、少しさみしかったです。

 

あと、ラファエロとソフィの対戦時に「輪廻夜想」を流すのやめて……。他にも要所で『グランギニョル』の曲も効果的に入っていた気がするのですが、気のせいでしょうか。

あっ、三津谷さんの殺陣をじっくり見るのうっかりしてたよー。あの方の動き、綺麗で好きなのです。


あと、カーテンコールでのソフィ(三津谷さん)の礼の作法ってどんな意味があったんでしょうか。何だか人形みたいでした。『月』だと、エミールも妙な礼をしていましたよね。


◆萬里
萬里、クラン生とは少し年の離れたお兄ちゃん感がよく出ていて良かったです。「ガキども」とか、口の悪さは実父萬里そっくりですね。笑

「姉さんによく似ている」の一言は、ネブラ村の光景を思い出して切なくなりました。


彼とラファエロの守護者コンビ(但し仲は険悪)が、それぞれの守護対象のために共闘するあのシーンが大好きなのですが(アンジェリコ暴走シーン)、二人とも守護者としてのキャラクターがより強調されていた気がします。それでいて、「守護者」の響きに悲壮感が少なくなっていたように感じました。


萬里の「生きろ」は、その後のソフィにどのように受け入れられたのでしょう。呪いになってなければいいなぁ。


◆アンジェリコとラファエロ
「いや、あいつは死んじゃいけなかったんだ……」の言葉に、やっとアンジェリコが本心を認めてくれたか、と安堵しました。


◆クラウス
クラウスがウルとソフィに言った、「ここにいるみーんなが“TRUMP”ですよ」は単なるその場しのぎではなかったのだなと、漸く気づかされました。繭期の少年たちはクラウスの「心を映す鏡」ですから。

 

クラウスはニコ・ヴラドのこと、ニコって親しげに呼ぶんですね。古の話が気になる……。次に陣内さんが主演ぽく発表されたら、クラウス過去編の『sacrifice TRUMP』なんか観られるでしょうか。




◆さいごに
薄々、嫌な予感はしてたけど、やっぱり「TRUMP」の悲劇自体がグランギニョルだったんですね。しかも養護院の院長先生(?)がダミアンコピーとか、刺客の出処が予想外すぎる。

『COCOON』を過去作との関連でまとめると、『月』は『TRUMP』の前日譚、『星』は『グランギニョル』の後日譚といったところですかね。

あとサントラの『TRUMP』からのアレンジが素晴らしすぎたので、サントラください。切実にお願いします。和田俊輔さんと新良エツ子さん、いつも良いお仕事すぎます!!(ご結婚おめでとうございます!)


さて、今からゆっくりパンフレット読みます!
パンフで解決する点とか、矛盾する点があったらごめんなさい。

 

ちなみに、Twitterに

とか書いたので、DVD観てからまた戻ってこれるといいなぁ。笑

 

みなさん繭期お疲れ様です!まだ観劇できる方がうらやましい~!ぜひお楽しみくださいね。
大千秋楽の成功を祈っています。