こんにちは、花です
帯には「村田沙耶香の最高傑作!」「コンビニ人間を超えた!」などと書かれていて気になったので手に取った本です。
半日もあれば読み終える厚さの本で、一気読みしました。
あらすじ
主人公の笹本奈月は小学校に入学した年、駅前のスーパーでピュートというポハピピンポボピア星の魔法警察と出会い、地球に危機が迫っていることを知ります。
そこで奈月は魔法少女になって地球を守るようになり、彼女が魔法少女であることを知っているのはいとこの由宇だけでした。
二人は年に一度、お盆の時期になると祖父と祖母の家がある秋級(あきしな)の家で会っていましたが、離れている時間が恋しく、小学三年生の時に恋人になりました。
自分の住んでいる世界(地球星人の暮らす世界)は、工場で男女を暮らさせ子供を作らされる。
働き、子どもを作らないものは見つかると強制的に工場の役目を担う事になってしまうと大人になっても考えるようになってしまう。
ポハピピンポボピア星に帰ることができないならば、地球星人に洗脳された方がマシだと考えるようになった頃、
君はポハピピンポボピア星人として生きてくれと言ってきたのは夫でした。
感想&ネタバレ
村田沙耶香さんの作品は「グロい」と評判ですが、この作品は群を抜いてグロいかもしれません。
ですが、こうしなければいけなかった人間の選択を否定できないと考えます。
ポハピピンポボピア星という一見ファンタジーな要素もあって、宇宙に帰ってめでたしめでたしのラストを思い浮かべていた私にはかなりの衝撃というか驚愕というか。驚き過ぎて口が開いたままといった感じです。
地球星人の「工場」で部品として暮らすのが嫌だと共鳴した三人が思い出の秋級(あきしな)の家で生活をはじめ、
田畑を荒らして食物を手に入れ、盗みを働き、洋服を脱ぎ、三人で水風呂に浸かり、山に積み上げた布団で巣穴のように眠るという野生化が進み、その生活を脅かすように襲ってくるものが来て殺し、最後には殺人もバレ捕まってしまうワケですが。
「どうして誰も彼女の話を聞いてあげなかったのか」と読んでいると思わずにはいられない衝動にかられます。
「こども」は「自分のいうことを聞く道具」でも「憂さ晴らしの対象」でもありません。
当たり前だけれど作中の子供たちは親の支配下に置かれてしまい個性など抑え込まれてしまっている印象です。
ラストでは、男女三人でお腹を大きくして妊娠しているという衝撃の展開でしたが
男だから、女だからという概念も大きく彼らを苦しませていたのかもしれないです。
人間を解体してさばき、調理して平らげる。お腹が空いたら食べる、お腹がいっぱいになったら眠る。
本能のままに生活したら健康的に妊娠したのかもしれないですし、互いの身体を舐め合ったからかもしれないし。
受容しない社会と受け入れられなかった者達の物語です。
村田沙耶香さんは、こういう世界の描写がとても上手い作家さんだと思います。