きょうは「石膏取り」の話をさせていただきます。
 
石膏取り」ってよく知らない方も多いかと思いますが、簡単に申しますと、粘土などで作った人や何かの形を石膏を使ってその原型から複製を作ることです。
 
皆さんも中学や高校の時に美術室で見かけたことがあると思いますが、石膏像というものがあります。あれをイメージされると分かりやすいと思います。
私が石膏取りを初めてやったのは美術大学の1年生の時、
 
授業で老人のモデルさんの頭部を粘土で作るという課題がありました。
 
それを最終的に石膏に置き換えて作品とするという課題です。
 
石膏とは見た目白い粉で、硫酸カルシウムという鉱物です。
 
同量の水と混ぜるとトロトロになり、だんだんクリーム状に。その後、数分の後には硬く固まる性質のある素材です。(固まる時、熱が発生します)。
 
そんな性質を利用して、型を取るのです。
 
ー型取りの方法ー
 
始めに用意するものは、石膏、ボウル、切金、ガーゼ、かくはん用のスプーン、できれば計量器。
 
切金(金属の薄い板を細かく(2×3センチくらい)カットしたもの(石膏を分割するための区切り、境界線になる)。
 
換気のできる部屋で汚れてもいい格好で、広めに養生シートや新聞紙を敷いて飛び散る石膏をガードしておきましょう。
 
 作業の進め方は以下のようなものでした、
 
まず粘土で作った頭部を(ほぼ実物大)を前と後ろに二つに区切るために、薄い真鍮の板を細かく切り(切金といいます)、その小さなピースを粘土にきれいにそろえて刺して、耳のところで前と後ろに区切っていきます。
 
石膏を前後二つのパーツに仕切るためです。
 
そこに石膏を振りかけるのですが、石膏はボウルに半分くらいに水を張り、そこに少しずつ石膏をパラパラと振り入れていきます。
ほぼ、同量の石膏を振り入れます。(沈んだ石膏が水面ぎりぎりまでになったらもうちょっとだけ石膏を入れて水面上の乾いた石膏が1分くらいで水を吸ったらスプーンで混ぜます。
 
空気が入らないように、しっかり混ぜたらいよいよがん系に振りかけます。
 
溶いた石膏を指先やスプーンを使って粘土に振りかけます。まんべんなくガンガン振りかけます。辺りに飛び散ります。気にせず振りかけるうち固まっていくので、だんだん盛り上がって厚みが出てきます。
 
厚さが1,5~2センチほどになったら、そこまで。後は乾くのを待ちます。
 
この時底面になる部分には石膏をかけません。そこは窓口として開けておきます。
 
全体に盛り付けた石膏が固まったら、切金を境目に前後にパかッと割ります。切金のところにマイナスドライバーなどをこじ入れて、広げるのです。
 
上手く二つに分割が出来たら、原型である粘土はこの段階で用済みです。一生懸命に形作った粘土はその役目を終えます。
 
粘土からきれいに取り外せたら、その石膏のパーツの内側をきれいにして、そこに石鹸水を塗り、また元の状態に組み合わせます。これを雌型と言います。
 
ひもや針金などで硬く縛り付け、動かないようにします。
 
その後、また乾くのを待ち、今度は本体となる石膏(雄型)をその内側に底面のところから流し入れます(この新しく流し込んだ石膏が粘土と入れ替わる形で石膏像が出来るのです。
 
内側全体に石膏が薄く行きわたるようにぐるぐる回してたり、ひっくり返して全体にいきわたらせます。
 
部分的に厚さが異なってしまわないように完全に固まる前に余分な石膏を捨てます。
 
それを2,3度繰り返すと本体が出来上がります。
 
この時、どうしても石膏がいきわたらず、厚みが出せない部分には補強のために内側にガーゼなどを石膏にくぐらせたものを貼り付けます。小さい作品ならいりません。
 
そして、乾くのを待ち、外側の石膏をノミで割ったり削ったりして、中身を取り出せば、複製の出来上がりという事です。
 
 
大きいものはそんな風に作ります。大体そんな流れで石膏による複製が出来るのです。
 
 
学校の美術室にあった石膏像はそんな風にして出来上がったものです。(おおざっぱでごめんなさい)。
 
当時の写真はありません。ごめんなさい
 
小さい作品の石膏取りの方法
 
別の小さい作品の石膏取りの方法を写真付きで紹介させていただきます。
 
これは切金ではなく、粘土(油粘土)で型を分ける方法です。
 
フィギュアなどの小さいものはこの方法がいいです。
あるいは石膏をシリコンに置き換えてるといいと思います。
 
これはちょっと入り組んだ原形の型抜きを3分割で作るために、原形の3分の2を粘土に埋めて3分の1だけに石膏をまぶしかけたところです。
 
3分割の雌型を作る所という訳です。
 
シリコンなら入り組んだところも型取りできるので、2分割で大丈夫です。
 
油粘土で原形の3分の1だけ上に出して、後は埋めてあります。
石膏が合わさる部分には型がずれないように丸いへこみを幾つも入れてあります。
 
大体、1,5から2センチくらいの厚さになるまで石膏を盛り付けます。
補強と変形防止のためにふちに針金を入れています。
ガーゼで補強してもいいです。
 
写真はちょっとやり方が汚すぎますね。
 
こうならないためには粘土の外側に玩具のブロックなどでで壁を作る方法がありますが、そちらが賢明なやり方です。
 
1ピースが乾いたら次の1ピース分を粘土から出して、そこに石膏を同じ要領で盛り付けます。
そうして3つ出来上がったら、乾くのを待って、割り広げます。
 
その後、原形を抜き取り、そこに新しく石膏(私の場合は紙粘土か石粉粘土)を盛り付けたら(押し付けて)雌型を元の通りに合わせます。
 
 
下の写真の場合、3つの雌型をもとのように組み付けてそれを針金やひもなどで縛りしっかり固定しています。写真ではひも。そうして乾くのを待つのです。
半日から1日待って、乾いたら雌型をノミやマイナスドライバーで割って中身を出します。大きいものだと雌型は割り出すときに壊れてしまいますが、小さいものであれば幾つも作品を複製できます。
上の写真は3つの型を開いて中から猫の顔が出てきたところです。
 
こうして、同じ作品がいくつも作ることが出来るのです。
下の作品は色違いで作った、頭部が動く招き猫です。
 
 
 
言い忘れましたが、雌型の内側には作品となる石膏や粘土とよく剥離するようにカリ石鹸を塗っておきます。
 
カリ石鹸とは食器洗い液体せっけんをちょっと薄めたものでOKです。
 
カリ石鹸剥離剤となって石膏どうしがくっつかないのでそこからきれいに剥がれます。
 
そうして雌型をはがし、出てきたものが作品となるのです。
 
接合部分などに出来るバリ取りや仕上げ磨きをして出来上がりとなります。
 
 
 
雌型どうしの接合部分には、しるしとなるように小さな突起とへっこみがあります。
粘土で区切る時にその面に筆のお尻などでしるしをつけておくのです。こうすると型を組み付けるときにぴったりと合わさります。
もっと細かいディティールを表現するのであれば石膏ではなくシリコンによる型取りがお勧めです。
フィギュアなどではシリコンによる型取りがほとんどです。
 
小さなものや、細かく複雑な原形の複製を作るならシリコンで型を作るしかありません。
 
それはまたいつか。
今日はこの辺で、ではまた。
 
追記
 

石膏は文房具店やホームセンターでも買えます。

 

他にスプーン(石膏をかくはんしたり盛り付けたり)ボウル(石膏を混ぜる容器として)お玉のようなもの(石膏をすくうため)、計量器(あれば)などが必要です。(ヨーグルトのプラスチック容器が使いやすいです)。

 

また、汚れてもいい服装、作業場にはブルーシートなどがあるといいと思います。

 

石膏は排水溝に流すと排水管の目詰まりや破損の恐れがありますので、ゴミとなった石膏は極力新聞紙などでぬぐい取って、地域のごみ処理のやり方にならった方法で廃棄してくださいね。

 

以上です。

 

 

 

 

クッキングはかりなら1グラムから計量できるので、便利。シリコンやレジンの計量はシビアですからね。