♯4

先日、マクドナルドで
マックシェイクを飲んでいた時のことだ。

ふと顔を上げると、
斜め前にセルフオーダーの液晶パネルが見えた。
ちょうど私の方を向いている。
そしてそのパネルの前に
見るからに80歳は
超えているだろうおばぁの背中があった。

液晶パネルが丸見えなので、彼女が何を注文しているかも筒抜けだ。ハンバーガーとゼロコーラ。

内心、ポテトはいらんのか、と思いながら眺めていた。

次の瞬間、私の目は点になった。

おばぁの指が、画面の上を舞った。タップ、スワイプ、タップ、確認、タップ。淀みなく、迷いなく、まるで長年使い込んだそろばんでも弾くかのように、サクサクと。思わず見惚れてしまった。

おばぁ、やるやん。

そう思った瞬間。

スン、、時が止まった。

マクド注文マスターのおばぁの手が止まった。

最後の決済画面。おばぁはバーコード決済を選んだ。

しかしそこだけが、どうにも攻略できない。
あの俊敏な指が、初めて宙で迷った。
タイムアウト。
前の画面に戻って、やり直す。
またタイムアウト。また戻る。また挑む。

ここまでできたのに、、ここまでたどり着いたのに、、

あかんか、、あかんのか、、
PayPayか? d払いか? なんや? 無理か?

諦めない。

その繰り返しを、
私はシェイクを飲みながら見守っていた。いや、正確には「見守る」などという悠長なものではない。おばぁが少しでも助けを求める素振りを見せたら、すぐに駆けつけられるよう、片足をスタンバイさせながら。

我ながら、妙な体勢だった。

でも、おばぁは誰にも助けを求めない。その背中が、そう言っていた。タイムアウトのたびに舌打ちするでもなく、周りを見回すでもなく、ただ淡々と、また最初から。

私の片足スタンバイも、だんだん疲れてきた。

もう私も諦めるか、そう思った、その瞬間。

おばぁは、すっとパネルから離れた。

そのままカウンターへ歩み寄り、店員さんに何かを告げると──ものの数秒で、ハンバーガーとゼロコーラを受け取って、颯爽と席へ向かった。

そしてテーブル席に腰を落ち着けたおばぁは、スマホを取り出し、画面を眺めながらハンバーガーを頬張っていた。その口元には、うっすらと笑みが浮かんでいた。

何がそんなに楽しいのか。誰と話しているのか。何を見ているのか。

私には、わからない。わからないけれど、その笑顔だけは、なんだかとても豊かだった。

バーコード決済、今日はできなかったけれど、次回は必ず攻略してきよるやろ。


素晴らしき人生の先輩‼️


そんなおばぁに、次は頑張れよ、とポテトを差し入れしたかった。

ま、Sサイズでええよな