希少な「エンシュウムヨウラン」水戸で発見 茨城
2013.9.3 02:13 産経ニュース
Lira’s vita e navi 
水戸市で発見されたエンシュウムヨウラン

 国内の一部でしか見られない希少なラン科の植物「エンシュウムヨウラン(遠州無葉蘭)」が水戸市で見つかったことが2日、わかった。エンシュウムヨウランが県内で見つかったのは初めて。関東以北では生息記録がなく、今回の発見で茨城県が北限の生息地となるという。(海老原由紀)
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 エンシュウムヨウランは光合成を行わず、特定の木と共生するキノコ菌から得る養分で生きる菌寄生植物。葉はなく、1本の茎に11~12ミリの黄褐色の花を1~6個つけるのが特徴で、静岡、愛知、高知、宮崎の4県にのみ分布しているとされていた。
 発見したのは、ひたちなか市佐和の内山治男さん(60)。今年3月の退職まで水戸市の大成女子高に教頭として勤務する傍ら、環境省の希少野生動植物種保存推進員として絶滅危惧種の調査や「茨城植物研究会」、「茨城生物の会」のメンバーとして地元の植物の研究に携わってきた。
 内山さんが5月31日に水戸市内の民有林を調査していた際、広葉樹の周りに花が咲いている植物を見つけて採取。国立科学博物館筑波実験植物園(つくば市天久保)に送ったところ、植物の大きさや花の形などからエンシュウムヨウランと確認された。
 筑波実験植物園の遊川知久植物研究部多様性解析・保全グループ長は「ほかにも生息している地域があると思う。数多くの個体が見つかれば、これまで知られていないエンシュウムヨウランの生態が明らかになる」と期待する。

内山さんによると、環境省のレッドリスト(絶滅の恐れがある動植物のリスト)に入っている植物は、これまでの調査で山地よりも平地に多いことがわかった。ただ、そうした植物の多くが土地開発や環境汚染などが原因で絶滅に瀕(ひん)しているという。
 今回、エンシュウムヨウランが発見された民有林も周囲に住宅が立ち並ぶ地域。今後、土地開発が進んで林がなくなれば、「栽培や移植が難しいといわれる植物なので、なくなる可能性もある」と懸念する。内山さんは「身近な場所に貴重な植物があることを知ってもらい、自然に関心を持ってほしい。ランの発見がきっかけで、環境保全につながれば」と話している。
 内山さんは今回の調査結果をまとめ、今年度中に植物研究会の会誌で発表する予定だ。


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