ご質問

 

先日ERA検査と同時にCD138とフローラの検査も受けましたが、その後で、CD138の検査は内膜の基底部を採取しなければならないので、内膜が薄いときに採取しないと正確に検査できないとの記事を見かけました。
分泌期(厚さ9.1mmでした)に採取したことで、形質細胞数の検出に有意な差が出るのでしょうか?

 結果は、
「軽度のリンパ球浸潤が見られます。血管・腺管周囲の炎症細胞浸潤ははっきりしません。400倍視野(20視野)で1個の形質細胞が見られます。慢性子宮内膜炎は考えにくい像です。悪性像は見られません。」
というものでした。

 形質細胞が5個以上で、慢性子宮内膜炎(陽性)と診断されると理解していますが、一方で形質細胞そのものが胚を外敵として攻撃するとの記事も見かけるので、とても不安に思っています。形質細胞が1個でもあれば、着床・妊娠に影響するのでしょうか?
 そうであれば内膜炎と診断されなくても、抗生剤による治療をして0個にしたほうがよいのでしょうか?

 度々先生の貴重なお時間を私どもの質問でお取りして誠に申し訳ございませんが、お答えいただけましたら幸いです。よろしくお願いいたします。
 


 

 

 

 

お答え

 

いつもハナブロをお読みいただきありがとうございます。

ご質問ありがとうございます。

 

ご質問にお答えさせていただきますね。

客観的状況は
・CD138検査を実施したのは黄体期(分泌期:ERAと同日)
・結果:形質細胞1個
ですね。

そしてご質問は
①黄体期に実施したCD138検査を信用して良いのか
②抗生剤加療をすべきかどうか
の2点に集約されそうです。

<回答>
①    CD138検査は卵胞期の方が検出精度が良いという意見は確かにあり、こちらの論文に記載があります。
→  REPRODUCTIVE BIOMEDICINE ONLINE 36 (2018) 78–83
著者はコメントで2通りの解釈をしています。
1.形質細胞は基底層付近に多く存在するため、表層が厚くなる黄体期には基底層付近の組織が十分に採取できず、過小評価になる。(これが質問者様の仰る内容ですね)
2.卵胞期の検査対象者には、無排卵周期に伴う内膜の過形成が起こっている例が一定数含まれ、それが形質細胞の出現を促すため、過大評価になる。
という2通りです。

つまり、黄体期の検査が過小評価になっている可能性と、卵胞期の検査が過大評価になっている両方の可能性があるということです。
しかし一方で、黄体期でも卵胞期でも違いは見られないとする論文もあります
質問者様は黄体期に検査されていますので、過小評価になっている可能性はありますが、卵胞期に検査を行ったとしても劇的に結果が異なることはないと予想します。
判断材料の一つとして、十分価値があるものと思います。


②結論から申し上げると、抗生剤加療までは必要ないのではないかという印象を受けます。
逆の見解を持つ医師もいると思いますが、現時点では絶対的な正解を出せる問題ではありません。

CD138陽性形質細胞は、細菌感染によってのみ見られるものではありません。
当然ですが、抗生剤は細菌に対する薬なので、細菌感染によらずに出現した形質細胞が抗生剤で消えることはありません。
また、広域抗生剤の使用は耐性菌の出現を促す原因になるので、安易に使用するのは避けたいところです。

質問者様の場合、「細菌感染によって着床を阻害するほどの慢性子宮内膜炎が引き起こされている」とまでは言えないのではないかと思います。
乳酸菌製剤は使用した方が良いと思いますが、抗生剤加療はデメリットの方が大きいかも知れません。

実際、どれだけ抗生剤を使用してもCD138陽性形質細胞の数が減らず、結局そのまま移植して妊娠成立したという症例もあります。
現場感覚としては、「実は形質細胞は存在しているが、検査をしていないだけで、知らぬ間に妊娠成立した症例」も少なからずあるのではないかと感じています。
 

質問者様は、1個の形質細胞が気になっておられるようですが、それほど強いインパクトはないと考えます。


やや歯切れの悪い回答になりましたが、現時点では不明点の多い分野ですので、絶対的な正解を提示することはできないことをご理解ください。


改めて、質問者様の治療がうまくいきますよう、心よりお祈り申し上げます。
 

 

文責:[医師部門] 江夏 国宏   [理事長] 塩谷 雅英

 

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